テイルズ

□Mother〜貴女は私の母でした〜
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そう、自分が育った孤児院へ給料の一部を寄付して、子ども達の世話を手伝っていたのだ。
そこへ視察に公爵が訪れて、屋敷に連行(?)されて…


「息子の護衛と世話を頼みたい」


これだ。自分が混乱しているもとは。
何故自分に?と一瞬思ったが、自分が捕まった場所や、時々耳に入ってくる自分の評価(公爵が同じものを聞いているとは限らないが)を考えると、納得してしまった。
納得はしたが余計、返答に困ってしまった。
そんな自分に公爵は苦笑して、「一度、息子に会ってみないか」と提案した。
その提案に乗り、公爵子息のいる離れへと向かった。

話では、公爵子息は五年前に誘拐され、記憶を失い赤子のようになって帰って来たという。
今は使用人の少年(自分と同い年だそうだ)が世話をしているらしい。

コンコンと公爵がノックする音で、また逃避に走りかけていた思考を引き戻す。
どんな我侭坊ちゃんなんだろうと、開かれていく扉を見ながら最近思い出した『前』の自分(いや、『今』も同じか)が思う。

扉を開けたさきにいたのは、

「…フレン?」
「え?」

『彼』にそっくりな少年で、思わず『彼』の名前を呼んだが、今、目の前にいる彼は公爵家の使用人だ。
ちょっと気まずかったので公爵に聞こえないよう、小声でいつもの口調で謝った。

「悪い、お前にそっくりなのが『友人』にいてな」
「ああ、例の准尉だろ?」

来訪者にはよく言われる、と彼も小声で返して笑った。
二人の前では、公爵が息子の手を取り何かを話していた。恐らくユーリのことだろう。
大人しく話を聞いていた子息だったが、いきなり目を輝かせると、駆け足でユーリに寄ってきた。

そして、思いっきり抱きついた。
記憶を失い、精神的には五歳くらいとはいえ、身体的には十五歳。骨格もしっかりしてきている頃だ。受け止めるほうにダメージはいく。しかも、ユーリは女性。そのダメージは大きい。

「っ!ルーク様?」

倒れそうになるが、何とか受け止めて子息の様子を伺う。
すると子息はバッと顔を上げた。その瞳はやはり輝いていて、なんとなくいやな予感がした。

「お前、俺の姉上になってくれるのか?!」

ユーリは当たって欲しくない予感ほど当たるものだなぁ、と暗くなる視界の隅に思った。


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