記念小説
□拍手2
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「どこ行くんだよ」
俺はちょっと余所行きの格好したあかねを
玄関で見つけて呼び止めた。
「美容院よ」
あかねは当然のようにそう答えた。
「もう十分短いじゃねーか。これ以上どこ切んだよ」
「あのねー、ときどき切りに行かなくちゃ、この長さを
キープできないでしょ!」
あかねはこれまた当然のように言った。
「また伸ばしたりしねーの?」
あかねは長いのがすきなんじゃねえのか?
少なくとも俺はそうだと思ってる。
「あんたが短いのがすきだって言ったんでしょ」
あかねはなによ、忘れたの?とでも言いたげな目で俺を見る。
「まあ、そうだけど」
俺は曖昧に答えた。
別にこれは、本当は長いのがすきだったから、ではない。
あんな何気ない一言を(しかもあんなことのあとだったのに)
あかねが覚えていて、実践していることに驚いたんだ。
「でしょ?」
あかねはにこっとした。
「じゃ、行ってくるね」
機嫌よく出かけて行ったあかねを見送り、
俺は居間に向かう。
かわいいとこ、あんじゃねーか。
♪♪♪
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