記念小説

□あめふり
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もういっそ潔いくらいの雨。
ざあざあなんてもんじゃない。
ごうごうと降っている。


俺はブルブルと体を震わせて水気を払った。
見上げると、らんまはドアにもたれ掛って肩で息をしていた。
髪や服からはぼたぼたと水が滴って、足元に水溜りをつくっていた。
「ったく、ひどい目にあったぜ」
そう言いながら、らんまは男らしく服を脱いでそれを絞った。
俺はばっと体ごとらんまとは反対方向を向いた。

ほれ、という声と共にタオルを放り投げられた。
俺はそのタオルに体を擦りつけるようにして拭いた。
らんまは俺の後ろで着替えているようだった。
それが終わるとらんまはお湯を沸かしてやかんの中身の半分を俺にかけて、もう半分でお茶を入れた。
カップ(湯のみなんて気の利いたものはここにはない)を受け取りながら濡れてまっすぐになったらんまの髪を見た。
濡れたことで赤みがかった髪はより一層鮮やかに見えた。
「今夜はここに一泊、だな」
つぶやくようにらんまが言った。






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