その他

□ありがとう。
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「今、東風先生呼んだから。もうすこし我慢しててね」
そう言ってかすみおねえちゃんは戸を開けて、部屋から出ていく。
「いやー、でもそうなってまであかねを守ったんだから、エライ、エライ」
なびきおねえちゃんは呑気にそう言ってかすみおねえちゃんに続く。
「・・・・・・・・・・・・・」
あたしと乱馬は黙り込む。
「・・・気にすんなよ。俺が勝手にドジ踏んでこうなったんだから」
ぽつり、と乱馬が言った。


こんなときばっかり優しいのは狡いよ。お前が鈍臭いから俺がこんな目に遭うんだ!、と罵ってくれた方がどんなに気が楽か。
「・・・ごめんね」
涙声になってしまった。



「謝んなよ」
乱馬は優しくあたしの髪をくしゃっ、と撫でた。

乱馬はあたしを庇って怪我をした。乱馬がおじいさんに吹っ飛ばされて落ちた先にはあたしがいた。あたしは咄嗟に避けることができなかった。乱馬はあたしを下敷きにしないようにと、無理な体勢で着地し、失敗した。
地面に倒れ伏す乱馬。乱馬っ!、と彼の名前を呼び、抱き起こした。痛みにしかめた顔は青白かった。乱馬はあたしに、怪我は無いか、と言った。胸が、痛かった。
自分を落ち着かせ、乱馬の怪我を確かめ、抱き上げた。所謂お姫様抱っこ。あたしは恥ずかしがる乱馬を無視して、家の中に入った。
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