その他

□そんな世界
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馬鹿みたい。



あんなに乱馬を怒るあかねも、怒られる乱馬も。
だってあかねが怒るべきなのはどう考えたって私であり乱馬じゃない。
どうしてあかねは私に文句のひとつも言わないのだろうか。
乱馬も乱馬だ。怒られる筋合いはないのに。

 
私は何度も天道家の壁を破壊している。
別に無意識でやっているわけではない。自覚している。
でも、だからといって作為的に壊してやろう、と思ってやっているわけでもない。
今はそんなこと問題ではない。
天道かすみは、そんな迷惑極まりない中国娘にも笑顔で「いらっしゃい、シャンプーちゃん」と言い、お茶を出す。
その父も似たようなものだ。娘のライバルにも嫌な顔はしないし、うちの店の出前もとる。


再び乱馬とあかね。
私はよーくわかっている。
あの二人がお互い好き合っていて、私の入る余地はないということ。
わかっているのは私だけではない。
あかねの家族も右京も良牙もみんなわかっている。周知の事実。
それなのにどうして歩み寄らないのだろう。
いっそのこと私が背中を蹴り飛ばしてやろうかと思うくらいだ。
そうなったら感謝してほしいものだ。


それから、ムース。
馬鹿の代名詞。
こういうやつを世間では一途とか健気とかいうのだろうか。
まったく馬鹿馬鹿しい。
だって、私の目は一度だってそちらに向いたことはないのに。
一度だって笑い掛けたことはないのに。
一度だってムースのために肉まんを作ったことはないのに。
本当、馬鹿みたい。


私。
望みがないことは二十分にわかっているのに乱馬を追いかけてしまう。
あかねは憎い殺すべき相手なのに、どうしてか嫌いじゃない。
乱馬とあかねがたらたらしているのをじれったく思う。
そこに付け入ろうと思うのではなくて。

あの馬鹿な男を失うことを恐れている。
心の奥のほうで、行かないで、ここにいて、と叫んでいる私がいることに気付いたのはいつだっただろう。


馬鹿みたい。
みんなみんな馬鹿だ。


だけど、嫌いじゃない。















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誰がなんと言おうとシャンプーなんです
 

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