駄文

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ある暑い夏の日だった。
ちょっとした野暮用で蒼紫と般若は出ていた。

突然蒼紫が道端で足を止めた。


「……?」


突然の主の行動に般若は少々戸惑ったが黙っていた。


「……般若」

「はい」

「道草を食っていくが、構わぬか?」

「…?
はい、勿論です」


般若が返事をすると、蒼紫は目の前にある畑の中に入って行った。

般若の疑問をよそに、蒼紫は畑の奥へと入る。


「この畑の持ち主か?」


蒼紫を追うと、蒼紫は畑の奥にいる中年の男に話しかけた。


「そ、そうだが…」

「蒼紫様…?」


畑の主人は完全に動揺している。
蒼紫は何がしたいのか…?


「あそこの…」


蒼紫はある方向を指差した。


「花を一輪分けてくれぬか?」

「か、構わねえけど……」

「そうか。すまぬな」


畑の持ち主が返答すると、蒼紫はその花の方へと向かった。


「蒼紫様、如何されました?」


般若はまた蒼紫の後を追った。


「これだ」

「これは…」


蒼紫と般若の目の前には大きな向日葵の花があった。
蒼紫は小刀を出した。


「…これが一番若そうだな」


そう言って蒼紫は、まだ咲いてから日の浅そうな向日葵を切り取った。


「向日葵を如何なさるのですか?」


般若が尋ねると、蒼紫は小さく咳払いをした。


「向日葵は…璃紅が好きな花だ」


そう言うと蒼紫は足早に歩きだした。
般若は思わず笑ってしまった。


「向日葵の花言葉は『私の目はあなただけを見つめる』……。
ご存知なのかそうでないのか…」


だが一応黙っておこう。
般若はそう思い、歩き出した。

蒼紫の頭には、喜ぶ璃紅の顔しか思い浮かばなかった。



 

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