ミジカイノ

□未定
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しかし佐之助、脱がぬなら拙者でも大丈夫って、かなりの心外でござるなぁ…。
最後の一枚を絞り終え、
「全くもって薫殿達はこの事には一切関わらせないつもりでござる。
それよりお主の馴染みの遊郭でのツケやらの恩を、拙者に代わりに返さすなんて佐之、いかがなものかと思うでござるが?
この件に関しては佐之、お主一人でなんとかするでござるよ。」
そう言って拙者は桶の中へ絞り終わった洗濯物を放り込む。
さて、干しに行くでござるか。
立ち上がって桶を抱える。
「ま、まってくれ!俺一人じゃどうしよも出来ねぇから、オメェに頼んでんだよぉ!!」
そう言って拙者の着物を掴んで離さない佐之助。
相当困っているようだが、こればっかりは御免でござる。
それにもとはといえば、遊郭で遊んだ佐之助個人の私情にすぎない。
ここで拙者が助けてしまっては、佐之助自身を甘やかしたことになる。
うむ、やはりお主が店主にきっぱり断るべきでござる。
「拙者は断るでござる。
佐之、お主も他に方法が無いのなら、ちゃんと店の主人に男としてきっぱり断るべきでござるよ。
これはお主の私情。
どんなに頼んでも拙者は力を貸さないでござるよ。」
背後で必死に頼む佐之助に言ってやった。
少し酷だったろうか…、言った後に胸が少し痛んだ。
「だぁー!やぁーっぱ駄目かぁー…。
しゃーねぇ!前回のツケの分だけでも持って旦那に断りにいくかぁ…。」
パッ、と拙者の着物から手を話し、腕組みをしながらそう言って、佐之助は大きな溜め息を吐いた。
…なんだかんだ言って結局、始めから当てにしてなかったようだ。
その証拠に何処から取り出したのか、いつの間にか佐之助の手には三両握られていた。
ふぅ…、やれやれ。
人騒がせな奴でござるなぁ…。
とか言いつつ、呆れながらも微笑んでしまう拙者であった。
その時、
「ちょっと待って佐之助!芸妓さんの仕事、アタシがやってあげる!」
勢いよく居間の方から声が飛んできた!
まさか…、この声は……!?
不安を抱えながら、驚いて居間を見ると、そこには薫殿が仁王立ちで立っていた。
やはりあの声は薫殿でござったか…。
拙者の不安は見事に的中した。
「薫殿…!?まさか、話を聞いてたでござるか?」
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