ミジカイノ

□未定
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すっかり平常心を取り戻し、黙々とまた洗濯物をゴシゴシと擦っていく。
「バーロー!冗談じゃねぇぞ!俺は真面目に頼んでるんだよ!お前に!!」
思いっきり肩を掴まれ、またもや近くで、いや、拙者のすぐ目の前で佐之助が言った。
佐之の目は本当に拙者を見つめ、真剣な眼差しだ。
冗談ではなさそうだが、拙者は冗談としか考えらんない。
再び困惑する拙者。
「俺の馴染みの遊郭の店でよぉ、最近人手が足りないらしく、ちょっとしたおもてなしをする芸妓さんが必要なんだってよ。
だから俺に一晩で良いから誰か居ねぇかって頼まれたんだ。
勿論、俺も最初は断ったんだぜ!
だけどよぉ、そこの旦那には普段ツケやら何だかんだ世話になってるし、どうも断りきれず…、なぁ、頼む!!
剣心!この通りだぁ!
俺だけでなく、そこの店を助けると思ってよぉ…。」
戸惑う拙者をよそに佐之助は話を進める。
「遊郭の芸妓つったって、別に脱がなくて良いさ。
ただ待ってる客のもてなしをするだけで、適当に踊ったりしてりゃあ良いんだよ。
それに一晩中つったって待ってる客が居る時だけで、居ない時は奥で自由にくつろいでりゃあ良いさ。
俺もその晩用心棒として頼まれたから、店に居るから安心しな!」
そう言って、拙者の肩をポンッと叩く。
全く…、コイツは他人事のように話していくでござるなぁ。
「拙者は断るでござる。
それに何より拙者は男でござる。
芸妓もなにも無理でござるよ。
他を当たるべきでござる、佐之。」
そう言って拙者の肩に乗った佐之助の手を退かして、洗い終わった洗濯物を絞っていく。
冗談ではないらしいが、どっちみち拙者はやらないでござるよ。
そもそも男の拙者に芸妓をやってくれなんて、佐之も失敬でござる。
「でもよぉ、いくら脱がねぇつったって譲ちゃんや恵とかに遊郭で働けとも頼めねぇし(頼んだ瞬間俺の身もどうなるもんか…)、
それに脱がねぇなら剣心、オメェでも大丈夫だろうと思ってよ。
なぁ、だから頼んだぜ!
…なんだ剣心、それともテメェ譲ちゃん達にやらせるつもりだったのか?
全く情けねぇぜ剣心!それでも男か!」
さっきとは裏腹にどこか得意気に、膝を附きながら話す佐之助。
やれやれ…、それが人に頼む態度でござろうか?
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