ミジカイノ

□コンプレックス
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「剣心!ただいま!」

まぶしい位の笑顔で薫殿が言う。連れて拙者も笑顔になる。佐之助の言葉が一瞬頭をよぎる。

譲ちゃんはオメェと一緒なら何だって嬉しいんだよ

もしかしたら本当に…、とそんな淡い期待さえ持ってしまう。薫殿の笑顔は拙者にとってそれ位大きなものだ。
拙者が少し小さな幸せに浸っていると、

「おい!剣心!二人でほのぼのするのは良いけどよ、それとさっき助けてくれたのも有難いが、とりあえず飯を食わせてくれ!!」

起き上がって弥彦が言う。

「そうだぞ剣心!俺も腹減った。」

佐之助も一緒になって飯をせがむ。二人の言葉で我に返る。薫殿は弥彦の言葉に顔を赤くしながら弥彦を怒鳴る。

「おろ、すまぬでござる。今から用意するでござるよ。」

やれやれと思いながら、昼飯の準備をする為草履を脱いで、縁側をまたぎ台所へと向かった、
……おろ!しまった!
昼飯の食材をついうっかり買い忘れていた。
…代わりの物で、と思ったが、生憎今は何もも無い。
ハァー、仕方がない買いに行くか…。
踵を返して今歩いてた場所を再び歩く。

「皆、すまぬ…、拙者ついうっかり食材を買い忘れてたでござる。今から買いに行くから少し待っててもらうでござる。どうしても待てないなら、米は焚いてあるから、おにぎりでも作って食うと良い。」

そう言いながら、草履を履き門へと駆ける。その時、

「待って!剣心!!」

薫殿に呼び止められる。立ち止まって振り返ると、薫殿が此方に駆けて来た。

「剣心!待って!アタシも一緒に行く!!」

胴着を着たままの薫殿が言う。気持は有難いが…、

「いや、薫殿結構でござるよ。出稽古から帰て来たばかりなんだから、まだ休んどくでござる。」

今は疲れているのだから、休んでてもらいたい。だが、

「いいの!行くって言ったら絶対行くの!!わかった?」

…おろろ、凄い気迫だ。拙者やむ無く、

「は、はい。承知したでござる…。」

折れた。薫殿はフンッと鼻を鳴らし、これでいいのよといった感じの顔だ。
二人で門を出て、街へと向かった。
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