ミジカイノ

□コンプレックス
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「拙者にとっては確かに、気にするまでも無いほんの些細な事にしか過ぎないのだが、薫殿にとってどうだろう?年頃の女性が、三十近くの拙者と同じ考えの筈が無いでござるよ。」

最後の一枚を干しながら言う。

「いやいや剣心、譲ちゃんは大丈夫!アイツは単純だから、オメェと一緒なら何だって嬉しいんだよ。それ以外は考えちゃいねぇ!」

佐之助の言葉を聞き、顔が少し赤らむ。それはそれで嬉しいが、何処か恥ずかしい。
洗濯物を干し終え、後ろを振り向く。

「佐之、それは言い過ぎでござろう。」

苦笑しながら佐之助に言う。

「とか言いつつ、オメェ、満更でもねぇって顔してっぞ。」

意地悪そうに笑って答える佐之助。 拙者もその隣に腰掛ける。

「おろ、そうみえるでござるか…、」

また、苦笑いした。顔がやや熱い。

佐之助の言葉が本当であったら、どれ程嬉しいだろう…。
そう思うのに、拙者は根が暗いせいか、どうも引きずってしまう。
本当に、薫殿は拙者と並んで歩くのが恥ずかしくないのだろうか?
拙者のこの身長を少しも気にしないだろうか?
考えれば考える程、自信が無くなっていく。

最後の茶をすすると、佐之助が体を起こし立ち上がる。そして両腕を真っ直ぐ上に挙げ、大きく伸びをする。門の方を一瞬ちらっと見て、ニッと笑う。

「ほら剣心、譲ちゃん達が帰って来た。」

「何ですって!!弥彦!!」

「ブース!ブース!ドブス!!」

門の方から聞き慣れたいつもの喧騒が聞こえる。薫殿と弥彦が出稽古から帰って来た。

「けーんしーん!飯!」

フーー、と言って疲れ切った様子で勢いよく縁側に横になる弥彦。
そして帰って来るなりいきなり、飯の注文。

「弥彦…!!あんた、さっき…はよくも…!!」

薫殿も後から現れた。
こちらもハァ、ハァと息を吐かせてかなり疲れ切った様子。だが、それ以上に怒りの方が強い。
縁側で寝そべる弥彦めがけて、持っていた竹刀を大きく振る。だが、

「まぁまぁ、薫殿。おかえりでござる。出稽古ご苦労でござった。」

振り落とされる前に、すかさず拙者が声を掛ける。同時に、
ピタッ、と弥彦めがけてた竹刀が固まる。
薫殿が構えていた竹刀を下に下げ、拙者の方に向きを変える。
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