ミジカイノ
□コンプレックス
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「今さらだが、剣心、オメェ随分とちっせぇよな…」
先程から洗濯物を干すのに背伸びをして竿に掛けていく拙者を見かねて、ふと思ったのだろう。だが、
「余計なお世話でござる。」
縁側に寝そべってくつろぐ佐之助にピシャリと言いつける。
拙者の身長の事はもう仕方がない。とうの昔にとっくに諦めたから、今更どうこう思わないが、それでもやはり、他人にその事を言われるのはどうも不快に思う。
「そうだけどよー、アレだ。少し気になってよ…、その…、男としてどうかってことよ。テメェと譲ちゃんの差。オメェら、一般的な男女の身長差とはかけ離れてるじゃねえかよ。なぁ剣心、そこらへんどう思ってんだい?」
何処か半分面白そうに聞いて来る佐之助。本当にコイツは人の恋路となるとお節介だ。
「まぁ、あの譲ちゃんの事だからなーんも考えてないだろうがよ」
そう言って、カカカと笑って茶をすする。
………、
うむ、確かに…、
言われてみればそうだ。たまたま薫殿が拙者よりも小さかった為、危うく恵殿のように見下される事はないが、拙者、普通の女性と背丈が変わらぬ。それ故、薫殿と並んでいても差がそんなに無い。
分かってはいたが、今まで特に気にも止めていなかった。さっき、佐之助に言われるまでは、
洗濯物を干す手が暫し固まる。それを見た佐之助が、
「おい、剣心!言い出した俺が言うのも何だが、そんなに気にする事じゃねぇだろう、身長差なんてよ。だからあんま深く考えんな!くだらねぇ!」
吐き捨てるように言った佐之助。
拙者の止まっていた手が再び動く。同時に、ハァーと溜め息をひとつ吐いた。
「確かにそうなんだが…、」
だが…何だよ?と佐之助が聞き返す。