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□【夕闇】(side2)
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試験のとき、そこでは“ワタシ”をつける
誰が誰だかわからなくするために、役目を全うする…それが、ワタシに与えられた存在理由。
『何故こんな無意味なコトを…?』
私を付ける前、とある少女は私に問いた。
答えてあげたい…
けれど、ワタシにはその権利はない。
勿論、口もきけるはずがない…ただのモノだから。
それに…
ワタシはもう、あの方々と同じ罪を…償えきれぬ大罪を犯しているのだから――…
†a masked ball†
今日もここでは昇格試験が行われていた。
昇格というのは名ばかりで、実際は鮮血が辺り一面を埋め尽くす血みどろの戦場。
施設側としては、力無き非力な存在を一掃できる合理的な“手段”…私はそう解釈していた。
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ここ(九十九施設)に来てからというもの、血の滲む訓練と実践とを数えきれないほど繰り返している。
「今日の訓練はこれで終わりだ…。負傷した者は引き続き遺体の処理、その他は消毒をするように」
総官と呼ばれる女は、体力を消耗仕切っている少女たちに言い放つ。
感情のこもっていない声色。
少女達は所詮は道具…ということなのだろうか?
顔を覆う仮面をつけているため、表情は窺えなかった。
処理も終わり、皆は部屋へと戻っていく。
「…まだいたのか、はやく部屋に戻れ」
相変わらず、声は冷たい。
◇◆◇◆◇◆◇
「…貴女は鬼です……」
少女は総官に臆することなく、静かに呟いた。
けして大きな声ではなかったが、静寂に包まれたこの空間では、充分に伝わっただろう。
鬼…。
その表現ほど妥当なものはないのかもしれない。
ん…あれ?