ヴィーグリーズ

□第二話 出発前夜
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「私が・・・?」
「あぁ・・・お前なら子供の一人くらい担げるだろ?」
「それくらいわけないが、一体どうするつもりだ?」
「これだよ、これ」
そう言ってアムリスは腰にぶら下げていた革袋からりんごを取り出した。
「りんご・・・?」
オディオンは意味がわからないと言うように呟いた。
「あんたならこれだけ言えばわかると思うんだけどな」
子供のような笑い方をしながらアムリスはりんごを手のひらの上で遊ばせている。
「・・・まさか」
「わかってるじゃねえか、このりんごをいっぱい詰めてそこにそのガキを入れれば大丈夫だ。荷物検査はあるだろうが一個一個見るわけじゃねえからな」
ようするに袋の中にりんごを敷き詰め子供を入れる、その上からまたりんごを入れる。これなから除かれてもわからないし、外から見てもわかりにくい。
「どうやら、本気で言ってるようだな」
「本気もなにも俺はこれしか考えてないぜ?もともと頭を使うのはあまり好きじゃないんだ・・・。いざとなったら走って逃げればなんとかなるだろうしな・・・」
どうやらこの男は基本的に楽天的な性格のようだ。しかし、その性格のゆえ今までやってきていたのだろう。傭兵という職業はあれこれ考えるより、行動力があるほうが望ましい。将軍や軍師となれば別の話だが・・・。
「やはり、お前は面白いな・・・私の思いつかないような奇抜な発想や考えをする。お前を選んで正解のようだったな」
オディオンはアムリスからかうように笑っている。まるで、子供の相手をしているように。
「じゃあ、俺はりんごを集めてくる。お前はそのガキを連れて、宿舎にでも行ってな・・・どうせ、今日はもう日が暮れる。そしたら、門はもう閉まっちまうからな」
日が暮れると門が閉まる。それはどこも当たり前の話だ。夜中に敵に入られもしたら大騒ぎになる。そのようなことのないための対策だ。
「わかった、そうさせてもらおう」
「じゃあ、あとでな」
アムリスは振り向きもせず、軽く手をあげ街の中に消えていった。
(さて、どうするか・・・あの若者、中々鋭いところがある・・・このまま秘密にしていればいずればれるだろう・・・)
オディオンはアムリスの消えていく姿を見つめながら呟いた。
 

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