ハーメルンのバイオリン弾き〜真実の絆〜
□第五楽章 事実と真実
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「十数年前、ケストラーが封印された話は知っていますね」
「・・・・」
グレートはその話を始めたとたんにうつむき、黙り込んでしまった。
「そして、数ヶ月前クラーリィ殿がケストラーの目撃したのです。その後大急ぎで調べたところ、ケストラーの残留思念が具現化したものだと分かりました。単体では並みの魔族より少し強い程度なのですが、他の残留思念を取り込むことで強くなるようなのです。そして、思念によって性格や強さなども多様で、今確認されているのが、嫌悪の心からできた者と怒りの心からできた者で、嫌悪の者は怒りの者にすでに取り込まれています。占いの結果によるとあとは、愛・憎しみ・悲しみ・恐怖が残っているようです。多分今ここにいるケストラーが愛の思念からできているのでしょう。ケストラーの中に愛という感情があったとは思えませんが・・・」
「・・・・・」
「・・・」
「・・・・・・・」
しばらく沈黙が続いた。その沈黙を破ったのは・・・。
「ねぇ、今ここに居るのは愛の思念からできてるんだよね・・・」
「はい、そうですが」
「だったら、悪い人じゃないんだよね?」
「・・・分かりません、愛の感情でできているというだけで元はケストラーですから」
「でもさ、さっきも助けてくれたし、悪い人じゃないと僕は思うよ。それと、名前はケストラーじゃ変だから、何か決めてもいいよね?」
「私は・・・構わない」
愛の感情からできたと言われたその男はなんとも言えない顔をして答えた。
「まぁ・・・呼ぶときに困るので、名前はあった方がいいでしょうな」
「じゃあ・・・」
シェルはしばらく考え込んだような顔して、ふと思いついたような顔をした。
「レイス、レイスってのはどう?」