□感染
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「だーかーら!
 僕の休みの間に問題起こすなって、何度言ったらわかんだ、この蟋蟀野郎!」
「閻魔だけに?
 ああ、最近どんどん大王から離れてく…」

 上司は幼い顔で窓の外の薄曇りを眺めてふぅっと溜め息をついて見せた。

「被害者面してんじゃねえ!」
「ごめんなさいっ」

 その内、奴の顔面には蟻の巣が出来るんじゃないかと思う。
 ズブズブ深く刺していくとびすびす泣き出した。
 本当ならいい年したオッサン……否、もういい加減じいさんにはなっている筈の男が膝小僧を出して椅子の上で体操座り。
 大きめになっている帽子が目の上までずり落ちてしまった。

「だって寂しかったんだもん」

 ずり落ちた帽子を支えてやると、アーモンド形の真紅の目が潤んでいた。
 ワザとだ、こいつ。

「だもんじゃねぇって言ってんだ」
「いやん、児童虐待だぞ、鬼男君。実はショタコン?」
「あんたと僕の年の差を考えると、それはあんたのことです」
「……若い子大好き!」
「開き直んな、串刺しにしてイカ焼きにすんぞ」
「ふえーん、もうちょい柔らかい言葉で突っ込んでー」

 小さい手のひらがひらひらと振られた。
 このサイズ、小学校の中学年くらいだろうか。
 先程聞いた弁明という名の言い訳によると『神通力の使いすぎによる幼児退行』らしい。
 ここまでは、まだいいのだ。
 問題はその『神通力』の使い道。

『鬼男君そっくりの式神作って、遊んでもらったり、セーラー服着てもらった』

 アホか!否、アホだ。
 僕が責任をもって断定してやる。
 いくらでも言ってやります。あんたはアホだ。
 そんなまどろっこしいことをやるなら本人を呼べよ!
 神通力なんて怪しげな力使って自滅してるなら僕を呼べよ。
 っていうかお前どんだけセーラー服が大好きなんだよ!
 僕に着せるなってんだ、てめえが着ろ!そして見せろっ。
 ………………。

「鬼男君?
 なにやら自問自答してるみたいだけど、どしたの?」
「なんでもありませんっ」

 今、僕は何を考えました?
 このイカ毒に毒されてんのか?
 僕は真面目なキャラクターだったはずなのに!

「それにしても、大王って子供の頃は結構ちっちゃかったんですね」

「……なんか苦しい話題転換だけど、まあそうだね。
 小柄かもしんないなあ、鬼男君はわりかしおっきかったもんね。
 あ、やだ、殴らんといて!」
「殴りませんって、僕はどこの弟子ですか」

 露出しているおでこを撫でてみた。
 実際、完全な子供である。
 今なら飴玉一つで誘拐出来そうである。

 あれ?
 僕はもっと真面目なキャラクターだったはずなのにっ。
 僕は随分とこのイカに毒されているらしい。


【後書き】

 これギャグなの?
 って言う出来でスイマセン!
 まさかチビ鬼男君の前に子閻魔を披露することになるとは思いもよりませんでした。
 あの帽子は縮まないのででかいまんまです。
 書いてないですが、閻魔はズボンをはいてません。上着オンリーで浴衣のごとく。
 あ、パンツははいてます。
 ボクサーショーツ派か
 トランクス派かで悩んだので描写されてないのです。
 これ以上書くと鬼男君は確実に児童虐待で明日の朝刊の三面記事に載っちゃいます。

 はい、こんなんですが、900リク感謝!

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