反転飛鳥

□【幸福なぺット】
1ページ/9ページ



煉瓦を模した外壁のマンション。

本日欠席した友人は学年が上がると同時に寮を出て、
いきなり外に住むものだから吃驚した。

僕は全然その理由を知らないけれど。

実家が遠いときいていたのだけども、こういうとき独りって大変だと思う。

そんなわけで、プリントとノートを届けるついでにお見舞いすることにした。

彼の親友、小野妹子は生徒会で大変だし、小野君と違って力不足かもしれないけれど。

やっぱり風邪ひいて独りってよくない。

防犯対策なのかオートロック方式。

ん?なんか違和感があるな、言っては失礼だけど、ちょっと立派すぎる。

学生の身分には不相応なくらい。



部屋番号を確かめて、押す。

「はい」

少し間があって、出たのは女性の声だった。

あれ?
僕は押し間違えたのか?

松尾先生に訊いた番号とちゃんと同じなのに。

「源さんのお宅ですか?」

「はい、どちらさまですか…あ!もしかして、ヒュースケン君?」

「え、はい。
 あー、もしかして、シャマナ先輩ですか?」

「あったりぃ」

ああ、そっか。
納得した。
彼女さんだもんな。

わざわざ大学休んでお見舞いしてるんだな。

今年度に入ってまるっきり姿を見なかったものだから、失礼だけども、忘れてたけども。

「プリントとノート届けに来たんですけど」

「あー、鬼男君寝てるんだけど、上まで届けてもらっていい?
 ちょっと手が放せなくって」

「はい、わかりました」

もとよりそのつもりだったし、問題ないです。

それにしても、シャマナ先輩か、半年以上会ってない。

橘先輩は暇さえあればやって来て、色々差し入れたりしてくれていた。
その中には、シャマナ先輩お手製、というのもあったけど。

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ