中編

□綾なす者たち7
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「随分、庶民的な恰好だな」

簡素な筒服と羽織だけの神は負ぶい紐をかけて一歳くらいの赤子を背負っていた。

青白い頬を膨らませてから、神は溜め息を吐いた。

「笑わないでよー、一寸離すとこの子泣いちゃうんだもん」

紐を外すと、彼は水際に座り、赤子を膝にのせた。
褐色の肌と黄色の角を持ったその赤子は水面を物珍しそうに眺めている。

新しい鬼なのだろう。と、すると、私の試みは思ったよりもいいタイミングに恵まれたらしい。

「お似合いだよ」

「自分だって、厩戸をおんぶしたりしてるくせにぃ」

「私と君とでは立場が違う。
 こっちで恐れられている君が結構所帯じみているのはかなり面白い」

「細かい解説どーもありがとー。
 ダメだよ、鬼男君。まだ水冷たいんだから」

ころりと頭から池にダイブしそうになっている赤子の襟首を捕まえて引きずり戻している。
冥界の総司が所帯じみているというのは平和な証拠だと言いたかったのに伝わらなかったらしい。

「そういえば君が倭国にくるのは初めてだったな」

「うん。わざわざ何しに来たかというと、うちのペットが御世話になってたみたいなんでお礼をしに」

「子連れで?」

「ツッコミ所がずれてるよっ!」

力いっぱいつっこむと彼はガックリ脱力した。

赤子連れは仕方ないと言いたいんだろうか。

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