反転飛鳥

□苛烈なる椅子取りゲーム10
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で、どうなんでしょう?と妹子は言った。僕の予想は当たってますかってつまりそういうことを聞きたいんだろう。

妹子はひねくれているようで意外とストレートだ。
勿論髪の毛の話じゃあない。いやいや、髪の毛は外ハネの癖がある私には羨ましいほどさらさらストレートなんだけど、ていうか男の子なのにそんなチャームポイントを持っているとは憎らしい限りなのだけど、そんなひねた感じにストレートだ。

ついでに、冷めているようで友達は大事にするタイプ。その気遣い、少しくらい私にもおくれと言いたい。

「まあ、そんなとこだなー。私のことをちょっといいやつにしすぎてる気がするけど」

私だって、まあちょっとイジワルしたくなる時があるのだ。
相思相愛、見ていて甘酸っぱさが香ってくるほどの二人。
だのに本人同士はまるで気付いてないときているから。
大事にしたいと思う反面、つついていじめたくなっちゃうんだ。
そういえば昔、あれは小学校の低学年の時だっけか。そんなに私のことが好きなら鬼男をちょうだいって言ったら、顔を真っ赤にしながら悩んでた。

「なんかな、実写版で大昔の少女漫画を見てる気がするんだよなー。わかるか?」

「…なんとなく」

そうだろそうだろ、だって実際の恋愛ってああはいかないだろ?
欲しいと思ったら妥協なんか出来ない。ライバルを蹴落として、勝ち取っていくなんて当たり前。鳶に油揚げなんてのもまた日常茶飯事だろ。

まあ、私は可愛過ぎて困っちゃうから最初からある程度アドバンテージ持ってるけどさ、妹子みたいなタイプを相手にしたのは初めてだし、今までで一番ライバルも多くて、最初のアタックで嫌われたんじゃないかと思うくらい難物だったし。

そこいくとあれだ。
あの二人ってホント世界は二人の為にあるの!を地で行っちゃってる。それもいたって無自覚に。
表面だけなら、甘えたがりのワガママ彼女と辛辣な口をきくデレデレ彼氏にしか見えないじゃないか。

大体、どんな自惚れの強い男だって鬼男を見れば自信喪失ヘコんじゃうだろ?
誰があんな滅私奉公できるか。自分の彼女が自分よりカッコいい男に全部預けきってるなんてさ。

どんなに思い上がった女の子だって閻魔を見たら幻滅だろ?
自分より可愛い女の子に全力で尽くす彼氏なんて許せるもんか。

岡目八目どころか、周知の事実。キオスクが駅の中にあることより常識だ。
古き良き少女漫画的法則が現代に生き残っちゃってる。シーラカンスよりカブトガニより驚異。

「もっとも、後は本人たち次第だし、私は私で忙しいでおま。恋人が可愛い恋人よりも男の友情を優先しかねなくって気苦労が多いから」

「硬派と言ってください。それから、自分で可愛いとか言うな、痛い」

「酷い」

「事実ですけど」

ぴしゃんと言われた言葉にちょっと泣き真似。だって酷い酷い。最近、私のことほったらかし気味で鬼男、鬼男で閻魔で鬼男。せっかく獲得した彼氏が自分を見てくれないなんて悲しすぎる。

「そんなに冷たいと私泣いちゃうもんね」

曽良兄さんに頼んで私も女王様にプロデュースしてもらっちゃおうか。
本当に涙をスタンバイさせると、ちょっとオロオロしたのがわかる。
で、半ば強引に抱き寄せられて、耳元で僕が言いづらくなるでしょってぼそりと言ったから合格にしてやろう。

「じゃあ、今日の放課後は私にくれる?」

「あんたの放課後を僕だけにくれるなら」

言い慣れてないのが露骨にわかる不器用さが結構気に入ってるって口に出したら、お前きっと拗ねちゃうんだろうね。
さて、どこに行こう何を強請ろう。

私の胸は躍って仕方がない。

ああ、勿体ないなあお前たち。さっさとその手をとってしまえばあとはこんなに薔薇色なのに!

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