欲望を開放したけれど…

※ヴァリアー夢…ですが、ちょっとボス贔屓(笑)。ギャグだけです。
※タイトルの通り、OOOとの(ある意味)ダブルパロ。
※ヒロイン名は『メイ』に固定。
※ちょっち下ネタ注意。
※海より広い心をお持ちの方のみ、ご閲覧ください。



それは、何気ないヴァリアーの日常から起こった。

「ふぁぁ…あー…今日もよく寝たー」
先日の長期任務を終え、本部であるアジトに戻ってきたメイは、色々あったがいつも通りの朝を向かえ、食堂へとやって来た。

食堂には、珍しくメイを含めた幹部全員が、集合していた。
だた1人、ヴァリアーのボスであるXANXUSは除いて。

「あら〜、メイおはよう〜。ご飯できてるわよ」
メイの来訪を1番に気づいたのは、ルッスーリアだった。いつも通りの口調で変わりなく喋る。

「あ、うん。ありがとう。紅茶と一緒によろしくー」
「はいは〜い」
そういうと、ルッスーリアはキッチンへと消えて行った。

幹部全員が座れるように揃えられたテーブルとはいえ、XANXUSの指定席を除くと、空いている席は1つしかない。
仕方なく、メイは空いているその椅子に座った。

「おはよ、メイ。…いつもより、気分沈んでないかい?」
彼女の向かい側に席に座っていたマーモンはふと、そんな事を口にする。

「えっ!?…そ、そそ…そんなことないし!!」
「…」
ムキになることところが益々怪しいが、マーモンはあえてこれ以上の詮索はしないことにした。

その傍らでは――

「う゛ぉ゛おおい!ベル、てめぇ何、俺のメシに手ぇ付けてんだぁ!!」
「ししっ、隊長が隙ありまくりなのがいけねーし」
「う゛お゛お!!殺んのかぁ!?」
スクアーロとベルが相変わらずの大乱闘を起こしていた。
様々な物体が、メイの周りを浮遊するが、彼女は全く気にした様子がない。
向かい席に座るマーモンも同じであった。

「…」
メイにとってはこのような出来事はまさに日常茶飯事。むしろ騒ぎ立てる方が、メイにとっては、おかしい事と言えた。


そんな中。
「ん?」

不意に、自分の頭上にある物体が近づいてきたのを、メイは視界端で捉える。
メイは難なくそれを片手でキャッチすると、その物体をまじまじと見た。


「…?何コレ、メダル?」
メイの手に握られていたのは、大きさは500円硬貨ほどの銀色のメダルだった。
表には、何やら鳥の文様が書かれていた。

「あ」
そのメダルにマーモンがいち早く反応した。
メイも、その視線に気づき、話を振る。

「マーモン、コレが何か知ってるの?」
「ん。まあね。一応それなりに価値あるメダルだと聞いてるよ。出所はよくわからないけど」
「ふーん…こんな玩具みたいなメダル1枚にそんな価値があるとも思えないけど…まあ、いいや。ほい、あげるよ」
自分とっては価値のないものと判断したメイは、不要なモノ断言し、そのメダルをマーモンに譲ることにした。
そのメダルをマーモンは素直に受け取り、先程メイがしたのと同じように、まじまじと観察する。

「そうえいば…」
「何?」
「コレは人の欲望から出来た、っていう噂があるんだ」
「へっ…何それ…都市伝説?」
「さあね」
マーモンがふとしたことで思い出したこのメダルについての噂。どうやら曰く付きらしい。

その時、メイは特に気にも留めなかったのだが、次の瞬間にどこからか聞こえてきた声に、僅かに背筋を凍らせた。


『その欲望、開放しろ』

「ん…?マーモン、今何か言った…?」
「は?僕は何も…」
しかし、突然マーモンの語尾が小さくなる。
目元は隠れているにしろ、視線は何故かメイの背後にあった。
と同時に、ベルとスクアーロの乱闘が一時中断され、食堂内の空気が一気に変わった。

彼らの目線は皆、何故かメイの背後に集中していた。
蔑みとは違う――どこか好奇に似た視線を『ソレ』に向けている。

少し気味が悪くなったメイはゆっくりと振り返った。


そこには―――

異型――とも言える蟷螂の怪物らしき『モノ』がメイの背後に立っていた。

「…!!」

何故今の今まで気づかなかったのか、メイは悔しい思いと一緒に、驚きのあまり、珍しく目を見開いていた。

『貴様のその欲望、満たしてやる』
「は…?わ、私の…っ!?…って、あ!」
怪物は意味深な台詞の後、食堂の窓を豪快に割り、外へと飛び出した。

現実離れした出来事に、泣く子も黙るヴァリアーの幹部全員が、これまた珍しく言葉を失っていた。

「う゛ぉい…メイ…てめぇ…クソボスに内緒であんなモン飼ってたのかぁ…?」
何とか理性を取り戻したスクアーロがこの出来事の重要参考人とも言うべきメイに、殺気混じりに話を振った。

「なっ…!!そんなの知らないわよ!!第一、あんな気持ち悪いもの、誰が飼うか!!」

スクアーロの言葉で我を取り戻したメイは、自分の無実を証明しようと口を開く。
あんな怪物、たとえ自分が死んでも、地球の自転がひっくり返っても、飼いたくはないし、関わりたくもない。

「メイが知らないとなると…じゃあ、アレは一体なんなんだい?」
一方、マーモンは冷静に分析を続けた。
メイもそれに続く。

「さ…さあ…?でも、アレが出てくる前に何か言ってた気がする…」
「何を?」
「うん…確か…『欲望…を開放しろ…』とかなんとか…」

メイが言い終わるのとほぼ同時に、どこからか女性の悲鳴が聞こえた。ヴァリアーの女性隊員はメイだけなので、おそらくその声はヴァリアーで働くメイドのものだろう。
そして、その悲鳴を起こす原因はあの怪物に違いない。

「え…ちょっと…何…?」
少しばかり、混乱してるメイに対して、スクアーロが声を張り上げる。

「ちっ!うだうだしてねぇで、クソボスに見つかる前にここにいる全員でアイツを処理するぞぉ!」
処理、と言ってはいるが正確には殺す、ということだろう。
「い…言われなくてもわ…わかってるわよ!!」
「ししっ、何かおもしれーことになってるから一応はこの王子が付いて行ってやるし」
「お金になるかどうかはわからないけど、それなりに利用価値はありそうだね」
「!だから私を見るなっつーの!!」

ベルとマーモンは犯人だと思い込んでいるメイをじっ、と見つめるが、当の本人は変わらず無実を訴え続ける。

そして、あのXANXUSに見つかる前に、あの怪物を処理しようと、皆は声のした方向へ飛び出した。

「あらぁ?皆、どこいっちゃったのかしらぁ?」
メイの朝食の用意を終え、食堂に戻ってきたルッスーリアは、誰1人いなくなった食堂に、首を傾げていた。


数分後、皆がようやく怪物を見つけた時、周りは酷い有様だった。
メイド達の殆どが地面の上にうつ伏せで倒れていた。ヴァリアーで働くメイドはそれなりに身を守るくらいの体術は修得しているはずだ。
この状況をみただけで、この怪物はそれなりの強さを持っている事実を物語っていた。しかし、傍にいた男性の隊員達はどうしてか自分から危害を加えた者以外は全員無傷だった。

「どういう事だぁ…?」
スクアーロが率直な疑問を口にすると同時に、スクアーロの背後に控えていたメイの後ろに、その怪物が降り立っていた。
しかも一瞬の間に。

「!?」
自分でも気づかない内に背後に回りこまれた事実にメイは目を疑った。それはこの場にいた幹部全員が同じことを思っていた。

『これがお前の欲望だ』
「は…?何のことよ!私は知らないわよ!」

怪物が喋ること自体、浮世離れした事だと言うのにも関わらず、メイは全く気にせず、怪物に言葉で掴みかかった。
これが自分の欲望だというのか?メイには全く意味がわからなかった。

白を切り通すメイに、嫌気が差したのか、怪人は彼女の腕を掴んで、淡々と話し始めた。


『お前の欲望は…この小さすぎる胸のことだろう』
「は…」

が、怪物の発した言葉に、メイは思わず拍子抜けしてしまう。
周りにいた幹部達は、意外すぎる怪物の言葉に寧ろ硬直していた。
そんな周りの様子など気にも留めず、怪物は話を続ける。

『胸が何より欲しいのだろう?昨日の夜も己のボスに『胸が相変わらずない』とからかわれていたではないか』
「…!!!」

なぜ、その事を知っているのか、と言いたかったメイだったが驚きすぎて、思うように言葉にならない。

『ボスを見返してやりたいのだろう?それから満足させたいのだろう?だから、俺は豊満な奴から胸を吸い取り、お前に分けてやろう』
「…」
もはや、メイは言葉を発する気力さえ湧かなかった。怪物の言葉が進むにつれ、メイの顔は次第に赤みを帯びていく。

こんな人前で堂々と言われ、周りの視線が非常に痛い。
もはや、メイの周りにいた者達は、彼女を疑いの目ではなく、状況を悟ってか憐れみの視線を送っていた。

そして、遂にメイの羞恥心が頂点に達する。

「こ…こんな欲望…開放してくれなくてもよかったわよぉぉぉぉ!!」

それと同時に爆発音が響き、蟷螂の怪物はメイの手によって無事に倒されましたとさ。


その後、その現場を偶然目撃し、話も全部聞いたXANXUSによって、スクアーロは殴り、蹴り飛ばされるわ、メイに至っては仕置きと称して、散々鳴かされた事はもはや言うまでもないだろう。
ちなみにこの事件の謎は、未だ謎のままである事は、また別の話。

END


どうも、エミリーです。拍手ありがとうございましたー!
思ったより長くなった…。字数に余裕がないので(汗)、後書き?は割愛って事で(爆)。
これからもがんばります!


ご意見ご要望など、ございましたら。



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