Chase the chance
□すれ違い様の秘密の言葉
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―――そして次の瞬間。
雲雀はクロームの手首を掴み、彼女を前屈みにさせ自分の方へと身体を引き寄せる。
クロームの耳元に雲雀の口が寄せられ、何かを囁く。
「―――………」
「……!」
それを伝えると、雲雀はクロームの手をゆっくりと離した。
クロームは雲雀が言った台詞に困惑していたものの、ちょっとだけ嬉しそうな口調で返事をする。
「……うん。ありがとう」
「わかったならさっさと沢田綱吉の所へ行きなよ。
そろそろホームルームも終わる頃だしね。早くしないと、入れ違いになるよ」
「うん……わかった」
雲雀の台詞に納得したクロームは彼に対して軽く頭を下げると、そのまま応接室から去って行った。
「………」
応接室から少し離れた廊下。
奇遇な事に、周りに生徒はいなかった。
その場でクロームは深呼吸を繰り返し、高鳴る鼓動を必死に整えようとした。
クロームの脳裏に先ほどの雲雀の言葉が何度も蘇る。
―――本当に疲れた時は、僕の所に来ればいいよ。
けど、そんな姿を他の草食動物達に見せたら、君を咬み殺すからね。
「………おさまらない…」
高鳴る心臓の鼓動は鳴り止む事を知らない。
それに比例して、頬も赤く染まってゆく。
(―――こんな自分……知らない)
その後、結局クロームは綱吉とは会わないまま、並盛中を後にした。
――二人だけに交わされる秘密の言葉。
――それは決して消える事のない甘い言葉――
END
→後書き