悲しみの先にあるもの

□冷たくしないで
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――その仮面の下には一体どんな顔が隠されているのだろう。

――そんな”彼”を信用出来る訳がない――



――そう思っていたのに。











「しっ…失礼しまーす…」

放課後、いつものように朝比奈みくるはSOS団の部室へと足を運ぶ。
部室のドアを開けた瞬間、室内の状況を見て、思わず目を丸くし、反射的に縮こまった。


「あ…あのー…今日は古泉君だけですか?」
「おや、こんにちは、朝比奈さん。」

部室という狭い空間には古泉一樹、ただ一人だけしか存在していなかった。

いつも窓際に座って無表情に本を読んでいるはずの長門有希も、中央にある机に、堂々と座ってパソコンを眺めているSOS団団長の涼宮ハルヒも、唯一の常識人であるキョンもその日に限ってまだ部室に来ていないようだ。


状況を理解したみくるは渋々部室内へと足を踏み入れる。

それと同時に、何かを悟ったように、古泉が座っていた椅子から立ち上がる。


「ああ、メイド服に着替えるのでしたら、どうぞ。僕は出ていきますので」
「あ……はい…」


古泉がみくるの横を通り、彼女と入れ代わる形で部室から出て行った。


パタンとドアの閉まる音がみくるの耳に小さく聞こえた。


古泉とすれ違ったほんの一瞬。

冷たい空気がみくるの身体を駆け巡った気がした。


みくるにとって彼の行動全てに信憑性がなく感じてしまう。


そう思っていても、心の何処かでは、彼を信じてしまっている自分がいる。


わからない自分の心境に、みくるは思わず溜息を吐く。


とりあえず、いつも通りのメイド服に着替えようと、彼女は服のハンガーラックにが手をかけた。



―――まさにその瞬間。



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