悲しみの先にあるもの

□雨の日のトライアングル サンプル
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雨の日のトライアングル


夕日の沈みが夏に比べて徐々に早くなり、桜の木々も次第に茶色に染まりつつあった一〇月のある日。


我望理事長首謀によって引き起こされた一連のゾディアーツ事件は首謀者の喪失により幕を閉じた。 

そしてその事件の舞台でもあった天高こと天ノ川学園高校は数か月前までの騒ぎが嘘のようにすっかり元の学園としての平和を取り戻しつつあった。


しかし、脅威が去ったからと言って油断は出来ない。もしかしたら人間をゾディアーツという怪人に変身させてしまうスイッチはまだどこかに隠されている可能性もある。

そこで学園の平和を守ると宣言した宇宙仮面ライダー部の面々は、この一か月はスイッチの捜索にもあたっていた。
 
目立った結果が上がったわけではなかったが、それは同時にもう人間を怪人にさせるようなスイッチはもう存在しない可能性が極めて高くなった事を示していた。
 その報告を歌星賢吾から聞いた宇宙仮面ライダー部現部長である城島ユウキは、意思確認として己の頬を叩き、ある1つの決断を下した。

 
「しっかしー、今度の部長は友ちゃんかー凄い出世じゃない?」
今日の仮面ライダー部での活動を終え、JKと野座間友子は帰路に着こうと昇降口へと着ていた。時刻も午後7時を回ろうとしていたので、残っている生徒は少なく、朝や夕方には大勢の生徒がいる昇降口も今いるのはJKと友子だけであった。
 内履きから外履きの靴に履き替えながら、友子は今日の放課後の部活でユウキから己へと課せられた役目について思い出していた。

 


3年生である弦太朗、ユウキ、賢吾の3人はこれから受験本番を控える立場上、宇宙仮面ライダー部に顔を出す機会も大幅に減って来る。特に弦太朗とユウキは普段の成績は芳しくないので、受験では今以上に頑張らなければいけない状況にある。

 そんな今だからこそ世代交代の決断を現部長であるユウキはすることになる。もう部長の役目は自分ではなく、新しい人間に担ってもらう事を頼んだのだ。
 そして、その新しい部長としてユウキが指名したのが、他ならぬ友子だったのである。
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