Chase the chance
□すれ違い様の秘密の言葉
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―――それは2人だけに交わされる――秘密の言葉
「ん………」
「……」
物音1つしない静かな並盛中の応接室。
そこに堂々と置かれている少し高級感のあるソファーの上に、クローム髑髏は吐息を立てて眠っていた。
そして、応接室の中央にある椅子に座ってそんなクロームの様子を見ている人物が1人。
その人物はこの並盛中に君臨する風紀委員長――雲雀恭弥だ。
何故、クロームが応接室のソファーで寝ている状況になったのか。
時は数十分ほど前の事。
この学校に通う沢田綱吉に用事があったクロームは(何とか)外部手続きを終え、綱吉の元へ向かおうとした。
その途中、応接室へ戻ろうとした雲雀恭弥に出逢った彼女は、この学校はまだ授業中だという事を知る。
授業中では無理に会う訳にもいかず、少し困ったクロームを助けた(?)のは、意外にも雲雀であった。
“付いて来なよ”と言われて、とりあえず雲雀に言われるがまま、彼の後を追ったら、応接室に通された。
どうやら授業が終わるまでの間、この部屋で待っていればいいとの事らしい。
彼にとって外部の人間があまり校内をうろつかれるのは、気分がいいものではないので、やむなくこういう措置を取ったのだった。
しかし、クロームはしばらく応接室のソファーに座って、綱吉達の授業が終わるのを待っていたのはいいものの、
風紀の仕事で少しクロームから目を離していた雲雀の目が次に彼女を捕らえた時は既に現在の様な状況となっていたのだった。
日頃の疲れが一気に出てしまったのか、それとも、今日がぽかぽかした陽気だったからか。
どちらかはわからないが、このまま起こしてしまうのも後々面倒くさく感じたのか、雲雀はそのまま彼女を寝かせておくことにした。
――キーンコーンカーンコーン…
そんな矢先に聞こえる予鈴の音――
「ぁ………」
その大きな鐘の音にクロームは閉じていた瞼をゆっくりと開ける。
ようやく自分が寝ていた事に気付いたようだ。
クロームは椅子に座っている雲雀の方へ視線を移す。
そして立ち上がって一言。
「ごめん…」
クロームの言葉は短く少しだけ素っ気ない感じだったが、それでも彼女にとっては精一杯の言葉だった。
そんな彼女を見て、雲雀は一度ため息をつき、見ていた書類を机の上に置くと、手を折ってクロームがこちらに来るように促した。
「……?」
クロームは彼の意図がわからなかったが、とりあえず彼の方へと足を進めた。
机の前まで来ると、ちょうど二人は正面で向き合う形になる。