Chase the chance

□Clover
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――お爺ちゃん、お父さん、鷲尾さん、それから――ココ、ナッツ……


――私が男の人にこんな素敵なプレゼントを貰うのはシロップ………


――あなたが初めて何だよ?







「あ……いけない……
台本…ナッツハウスに忘れて来ちゃった……」


日も完全に沈んだ時間。

春日野うららはナッツハウスから自宅に帰ため、人通りが少なく、かつ暗い道を歩いていた。


しかし。
その途中でうららは明日の映画のオーディションに使うはずの台本が、鞄の中に無いことに気付いた。


どうやら先ほどまで、のぞみ達と一緒に練習していた時に、ナッツハウスに忘れてきたらしい。

「うーん……最終チェックもしたいし……
仕方ない……戻ろう」

うららは振り返って、来た道を引き返し、ナッツハウスに戻ろうと決めた。











一方のナッツハウスはというと。

「シロップ……悪いが…これをうららに届けてやってくれないか」
「はぁ!?」

ナッツがシロップに1つの台本を渡した。

それはうららが受けるオーディションの台本だった。

しかしシロップは。

「何で俺がわざわざ届けなくちゃならないんだよ!?」

――と。あくまで反対を表明。

他の人物に頼もうとしたのだが――

「店の片付けが残ってるから僕は手が離せないんだよ」

ココは無理。

「同じく。」

ナッツも無理。

「ココ様とナッツ様の夕食の準備があるから私は無理よ」

くるみも論外。

「……」

―――どうやら自分が行くしかないらしい。

オーディションが明日でなければ、明日の学校の帰りに取りに来れば大丈夫なのだが、オーディションは明日の朝からだ。

最終チェックもしたいに違いない。

多分今頃、台本が無いのにうららは気付いているかもしれない。


きっとナッツハウスに取りに戻ってくる可能性が高い。


――けれど。

「こんなに暗いんじゃ…女の子ならちょっと怖いんじゃないかな〜」
「うっ………」

何だかんだで自分を挑発するココ(しかし本人は無自覚)の台詞にカチン――と来たシロップは痺れを切らして――

「……ったくしょうがねぇな……
俺が行ってくるよ」

「よろしく」
「頼んだ」
「なるべく早く届けなさいよ!」
「あ〜はいはい…」

三人の言葉に空返事をしたシロップはそのまま、うららに届ける台本を持って、
ナッツハウスを後にした。
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