Precious Time

□April
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――季節は春。

――桜の葉が飛び交うある1つの並木道で―
――1人の少年と1人の少女が運命的な出会いを果たす。



「……あ…えへへ……やっぱりまだ朝早いから誰もいないや。
ラッキー!」


たくさんの桜の木が並ぶ並木道で、まだ誰もいない朝早くに1人の少女がやって来る。

少女の髪は桜と同じ色をしていて、瞳は翡翠色をしている。
年は7歳位で、頭に巻いているリボンが印象的な少女の名は――
―――春野サクラ。


サクラがこんな朝早くに桜のある並木道に来たのは訳があった。

「えへへ……今日が満開なのは知ってるもんねー
少しの間だけ、この桜を独り占めできる〜」

サクラは自分と同じ名前のこの桜をとても気に入っていた。
特に、この並木道にはたくさんの桜が植えられており、サクラにとって、絶好の光景である。
しかも、朝早くなら、この道を通る人はほとんどいない。

つまり僅かな時間だが、この絶景を独り占めできるのだ。

「アカデミーにある桜もいいけど……こっちの桜の方が綺麗なのよね……」


走っていたサクラは速度を緩めて桜をじっくり見た。



「やっぱり……綺麗だなー……」

自分と同じ名前でも、此方の桜の方が何倍も綺麗だと――サクラは思った。

(――自分にはそんな綺麗さは――少しも無いけど……)

短い間だけ咲き誇る桜はサクラにとっては憧れでもあった。






――その時。

――ガサッ

「―――ん?」

サクラの横――つまり、桜の木の裏から、微かな音が聞こえた。

(……誰か……いるのかな……?
でも……何でこんな時間に?)

サクラは付けていた腕時計の時間を見る。
時刻はまだ7時を回っていない。

普通にこの道を通るならまだしも、何故木の裏なんかに―――?


(………はっ!!
もしかして……他国の忍が侵入して……隠れてるんじゃ……!?)


――ありえない話ではない。

普段この道は人通りが多いわけでもなく(花見の時何かは別として)、ましてやこんな朝早くに通る人など、たかがしれてる。


(――とりあえず……アカデミーで習ったように……敵に近づく時は気配を殺して――――)

サクラは勇気を持って、桜の裏に潜む人物に気配を消して近づいた。
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