SS

物語に成れない突発的なはなしたちだったり日記だったりするしょーもない腐れ部屋





いわゆる自己満足の投棄所!


↑NEW※中には激しく気分を害するモノもございます

◆引き千切った赤い糸 



しとしと。しとしと。

雨は朝から降り、一度として止むことなく、夕方になった今でも降り続いている。


しとしと、しとしと。しとしと。

雨の中、視界を降り続く雨粒が遮るなかで、二つの影が親密そうに寄り添いあった。



しとしと。しとしと、しとしと。


二つの影が寄り添うのを、一つの影が哀しそうに見つめていたのを誰も知らない。

一つの影は少年だった。

二つの影は少年と少女だった。


一人の少年は甘栗色の髪で、二人の髪は少年が黒で少女は蜂蜜色だった。

しとしと。しとしと。



甘栗色の髪の少年は踵を返して走り出す。
傘は邪魔だと投げ棄てた。
甘栗色の髪の少年は泣いていた。
心の中で叫びながら泣いていた。
雨の中、ずぶ濡れになっても家を過ぎてもひたすら逃げるように走った。
甘栗色の髪の少年はいっぱいいっぱい走って、とうとう独りに為れるところへ行くと、大きな声をあげて泣いた。

慰めてくれる者。否定してくれる者は居なかった。




雨の中寄り添いあう少年と少女は、少女は少年に抱き締められていた。
少年の手にはナイフが握られていた。
そのナイフは少女の背中に突き立てられ、少女は口からごぷりと赤を吐き出してずるりと力無く地面へと倒れ。

黒髪の少年はニヤリとわらう。



甘栗色の髪の少年は沢田綱吉と云った。
黒髪の少年は雲雀恭弥と云った。
蜂蜜色の髪の少女は笹川京子と云った。

雲雀は沢田が好きだった。
沢田は笹川が好きだった。
笹川は沢田と雲雀が好きだった。

雲雀にとって笹川は邪魔で憎くて殺したくてたまらなかった。



血を洗い流す雨を全身に受けて雲雀は満足気に言葉を紡ぐ。


「さワだ、これで やっト… きミは ぼくを みて ク れる」


雲雀は笹川の頭にナイフを投げ棄てるように叩き込むと、沢田の落とした傘を拾い、さして沢田を迎えに行った。




沢田を迎えに向かう雲雀の手には薬の入った小瓶がひとつ。
中身はふたつ。






「一緒に飲んで二人きりの世界に行こう。
ずっと一緒だよ。」


押し込められた薬が溶けて吸収され、沢田は霞む視界の中で、彼に憑く大鎌をもつ死神をみ 。















白い病室で雲雀はたった一人、目を覚ました。
隣には沢田がイスに座っていた。
雲雀に気付き、笑った沢田の手にばアノ"ナイフがあった。






2010/07/28(Wed) 20:57 

◆真珠の溜め息 

※人間×妖怪パロ


俺は小さな山に住むモノノケだった。下級ではあるけれど、災厄を招く象徴だった。

特殊な力を持つ人間しか見付けられない存在だった。

だが、彼は俺を見付けた。


「そこで何してんの」


振りかざされたトンファーは俺をすり抜けて空気を切った。
目を見開き驚いた様子の彼は鮮明に今でも覚えている。
学ランを纏った少年は雲雀と言った。

其から彼は頻繁に俺に会いに来てくれた。たぶん、いつか俺を咬み殺す為だったのだろう。

触れられないけど会話は出来た。
いつしか他愛ない会話をするようになって、お互い、ずっと一緒に居たいと想うようになってしまった。

それから時は瞬く間に過ぎていった。春夏秋冬、幾度となく共に過ごした。
雲雀さんは財団を自らの力のみで設立した。

並行するように俺と会う回数や会話が減っていった。
何日何週間何ヵ月と会う日が無く。


「沢田? …何処にいるの?」


雲雀さんはとうとう俺を見付けられなくなった。


「沢田、ねえ 出ておいで」


雲雀さん、俺は貴方の目の前に居ますよ。
きちんと返事だってしているんですよ?


「ずっと来なかったからって起こってしまったの? お願い、出ておいで、さわだ…」


雲雀さんは生体だから出会った頃よりうんと成長した。俺はあの時のまま、少年のまま。
クンと雲雀さんの着るスーツの袖口を引っ張っても、其れは小枝に引っ掛かっただけにとられる。

大人になってしまった彼に、俺が認識されることはなかった。


「ねえ、沢田。本当に僕は視えなくなってしまっただけなの? 今もそばにいてくれているの?」


そうですよ。今も貴方の隣に腰掛けています。


「沢田、さわだ。 会いたい…また君に会いたい」


ごめんなさい、ごめんなさい。もう俺が視える事は二度と無いでしょう。
だから早く俺を忘れてください。忘れて本当の恋をして、幸せになってください。


「沢田、 君がすき、なんだ…」


泣かないで愛しい人。その溢れる涙を拭いたいのに、俺にはそれが出来ない。




さようなら、さようなら愛しい人。

一陣の風が全てを拐うように吹き、成年は辺りを見回すと眉にシワを寄せて山を下りていった。
その背中を見送る小柄な少年がいた。
少年はモノノケだった。
下級ではあるけれど、そのモノノケは一部の記憶を抜き取ることが出来た。



2010/07/10(Sat) 18:18 

◆そしてアメジストは大破した 

*十代×三十路なパラレル


休日が終わり清々しく爽やかな早朝の事。雲雀は今日も今日とてどんな獲物に出会えるのか、意気揚々と朝の見回り兼散歩がてらに学校までの道程を歩いている時だった。

「うわっと、と、と…ッ」

前方より鈍くさそうな声が聞こえ、少し眉間にシワが寄る。
見れば男が一人、薄手の着物姿で脇道に蹲っていた。

「ちょっと貴方、ここで何してんの」

近付いて解ったが、どうやら男の履く草履が下水の通るコンクリートブロックの隙間にハマり込んでしまったらしい。

「…少し失礼するよ」
「へ…?え、…ぅわっ」

ドゴッと雲雀は草履がハマり込んでいるブロックの僅かな隙間に指を入れ、片手で持ち上げてしまった。因みに一ブロックの重さはマンホール並みである。

「これで取れるでしょ」
「え、あ、本当だ! 有り難う助かったよ!」
「別に、いつまでも貴方にここで蹲って居られたら風紀が乱れる」
「はは、まさかあんなにキツくハマっちゃう何て思わなくてさ。改めてお礼を言うよ、有り難う」

男は立ち上がり、微笑んだ。雲雀は心臓を鷲掴みされた感覚を覚える。

「俺は沢田綱吉、そこの家の者だからいつでも遊びに来て」
「!!」

それじゃあ。少しばかり頬を染め穏やかに笑った綱吉に、雲雀は自覚を持って理解した。
示された屋敷の事などどうでもよい!
いやよくはないが…。

「沢田綱吉、必ず僕の伴侶に…」

してみせる!そう意気込む並盛最強の委員長様姿をうっかり目撃してしまった名も無き一介の生徒は、この世の終わりとばかりに半ベソをかきながら一目散に駆け出した。実はこの一介の生徒、今日より遅刻者撲滅運動週間が展開される(=初日)為、アノ意気込みはその事だろうと思い込んだせいである。
かくして、これより毎日と雲雀からのラブコールを受ける事となる綱吉は暢気に縁側にて膝にナッツと名の付いた子ライオンを乗せ朝の茶を啜っていた。
因みに沢田家は並盛一筋の通った極道であり、綱吉はその組の十代目に当たる者だと知るのはそう遠くない未来。かも?












───────
まだ雲雀は綱吉が三十路と知りません。知ってもだから何?って感じでアプローチしまくれば良いとおも!

綱吉は年の差を気にしながらも雲雀に骨抜きになって無自覚に大人の色気で雲雀を惑わせちゃえば良いとおも!





年の差はジャスティス!



2010/03/01(Mon) 14:47 

◆そしてぼくはキミに背を向けた 

じゃあね。
はい、また。



そう言って別れた次の日に君は死んでしまった。心部に一発分の鉛弾。
馬鹿なんじゃないのねえ、何時から君は未来を視ていたの。理由を知りながらも罵声られずには居られなかった。
判っていたなら回避すれば良かったのに。足掻けば良かったのに。
助けを求めていれば。僕、に。

僕は君を拐ったのに。

最後まで君はその小さな背中に全部背負って持って行こうとして残された奴らの事なんか考えもせずに勝手に託して希望を繋ぎ止める役を担わせて。
例え計画の一環だったとしても成功する確率なんて無に等しいのに。
ソレでも君は眠ってしまった。計画が進み始める前から何か言いたそうにしていて結局は一人で飲み込んだままで。

昔から大事なことだけは一切言わない。その癖は治らぬまま。

キミがひとりぼっちに咽び泣くのを知っていたのは僕だけ。その事に少しの優越感と駆け寄れぬ歯痒さ。
君にとって僕は守護者である他ないもの。



俺は死ぬんです。でもこの計画中では死なない、全部終わったときに俺は死ぬ。



なんで笑えたの。なんでそんなに幸せそうなの。
自己犠牲の心は今も変わらぬまま。そうやって自分が傷付けば良いと体の良い自己満足で偽善者に成り下がり結局君は逃げるんだ。
君は残されるのがイヤなんだ。だから先に逝ってしまうことを選ぶんだ。

そんな事をして一体誰が救われるって言うんだい。悲しみを残して君は二度眠る。
覚めなければ良い。君たちが企てた計画など失敗してしまえば君はずっと眠ったままに。
でも生きていることには変わりない。そう思うだけで僕は救われるのに。



宜しくお願いしました、雲雀さん。



狡い子。本当に狡い子だよ君は。
そんな焔の灯った瞳で見つめられたら、了承する以外の術を奪われてしまった。

死ぬと判っている者を送り出す事程に御胸を冷たく締め付けるモノはない。
どうして君なの。何故に君でなければイケなかった。

もしもこの想いが、これから入れ替わる昔の僕に継げたならば。
キミは彼を止めてくれるのかな?

そんな有り得ない夢を視ずには居られぬ程に。
キミに託したいんだ。


「まかせたよ…」


迫り来る切っ先に居る筈の無いカレを見た気がした。







2010/02/09(Tue) 22:34 

◆枯渇した湖には水草にまみれた命二つ 



関係法規≠関係放棄?

不可侵条約を結ぼうと言い出したのは他でもない僕であった。規約の内容を記した契約書を手渡せば君は苦笑いして了承した。

どうしてか何て。僕が知りたい。


アジトとアジトを繋ぐ扉は僕が自身に課せた線引き、つまりは彼へ対する境界線であり。込められた思いはさっさと気付けよ馬鹿野郎と言うところか。

昔から群れは嫌いで弱いやつも同等に嫌いだったが沢田綱吉も同じように嫌いだった。それは会った回数が殴った回数に匹敵するほどであり、また、罵倒した回数然り。


僕は本能から沢田綱吉が嫌いだった。

あんまりにも殴るものだから、赤ん坊に威嚇されたけど交えることができると知ってからは、自ら会いに行っては咬み殺した。



いい加減にしろと赤ん坊は僕を撃ち抜いた。
何の弾だったのか。特殊弾で有ることには変わりなかったが、その日以来、僕は沢田綱吉に会いに行かなくなった。


言うなれば、どうでもよくなったから。同じくに赤ん坊も。

何でか。今度は沢田綱吉自ら僕へ会いに来た。追い返すのも面倒で会話をするのも面倒で、茶を草壁に用意させては放置の毎日だった。

それから幾年の時間が流れた頃。沢田綱吉は一ファミリーのボスになっていた。


そう言えば中学を卒業して渡伊すると言っていたような気がする。

初めて組織のリーダーとして沢田綱吉に会ったのは中学卒業後から随分と経った頃で、何でもボンゴレ日本支部と風紀財団地下アジトとを連結したいとか。ましてや妙な計画にも加担してほしいとか。


冗談じゃない。そう突っぱねて帰ろうと腰をあげればすがり付かれ、鬱陶しいとそのあまり成長しなかった身体を蹴りあげる。

そんなやり取りを数時間。あんまりにもしつこいから渋々了承してやれば沢田綱吉は嬉しそうに笑った。


無機質な冷たい扉に触れる。連結して扉が取り付けられた次の日に沢田綱吉は死んだ。
棺桶に眠る姿を見た瞬間に中学の頃に抱いていた感情を思いだし、名前も理解した。

あはは、あまりの愚かさに笑いが止まらない。幼稚な独占欲は支配欲と区別がつけられず。



扉をさわった指が仄かに冷たく。もう少しで幼い彼が来る。

しかと感情を理解し目障りだった家庭教師は未だ赤ん坊。もう、逃がしてなんかやらないから。




思い出した日。赤ん坊に特殊弾を打たれた日から丁度、十年が経った日だった。




2010/01/29(Fri) 21:00 

◆晴れ、ドキドキ恋模様! 

朝日の清々しい土曜日のまだ静閑とした住宅街を、一人の少年が途中スッ転びながらも勢いよく駆け抜けていた。
実は志望高校の筆記試験に遅刻しそうなのである。


「…ッハァ、ハッ」


少年は心中、己を盛大に罵声っていた。
理由は至極簡単。乗る電車を間違えたのだ。
何度も下見ついでに道を覚えたはずだった。受ける所が地域外だったので、試験日に迷っては洒落にならないとソレはもう念入りに。
だがしかし。悲しいかな、昔より゙ダメツナ"と字が付くほどの落ちこぼれっぷりは伊達ではなく、今朝、余裕を持って家を出たのにか変わらず、駅について財布と試験票を家に忘れたのを思いだし、慌てて戻れば今度は通勤ラッシュにより人波で揉みくちゃにされ、やっとの思いで乗り込めば別の路線電車で。

気が付けたのは乗車人数が少なくなり、次の停車駅が電光掲示板に映ったときだった。



あれ?違くね? と。


そんな訳でもう朝からやられっぱなしな綱吉は、マジ泣きの勢いで顔を歪めつつ電車を降り速攻で改札口を抜けた。
唯一の救いは、目的の高校を囲うように線路が張られている為、今から頑張って走れば試験に間に合うかもしれないと言うことで。
道は判らずとも綱吉は常人より唯一優れている直感を頼りにひたすら走っていた。

そして勢いを落とさずに角を曲がる。


「イテッ!」


誰かとぶつかってしまった。ぶつかってしまい後ろ向きに倒れる体を支えようと、本能から勝手に伸びた腕がぶつかった相手の布を引っ掴み、もつれ込むように倒れ込んだ。
途端、後頭部と背を強打し痛みに呻く間もなく唇に柔らかい感触。恐る恐る眼を開ければ黒目黒髪の麗人(推定二十歳半ば)が、盛大かつ物凄く不機嫌そうに見つめていた。
無論、互いの唇かコンニチワをしている(因みに綱吉が確りと掴んでいたのは相手の胸ぐらだった)。






それが雲雀恭弥と沢田綱吉のファーストコンタクトであった。
その後、土下座と謝罪の嵐を巻き起こした綱吉は何故か総ての事情を喋らされ、何故か目的の高校まで親切に案内してもらい、無事に試験を受けることができた。

試験後、綱吉は帰りの電車内で今朝ぶつかってしまった相手を思い返していた。

すごく、きれいな人であった。



再び雲雀恭弥と出会えるのは無事受かることのできた志望高校の入学式の後だった。


「わお…君、僕の生徒なの」








2010/01/23(Sat) 08:53 

◆暗い森でお茶会を 

カチャカチャと陶器がぶつかる音がする。
此所には僕と綱吉しか居ない。綱吉は白いテーブルクロスの敷かれた白く円いアンティークテーブルで紅茶を煎れている。
僕は白いアンティークチェアに腰掛けて、テーブルに肘掛け待っている。

がしゃん。


「あ!」
「なに、してるの。大丈夫かい?」


綱吉は昔からどこか抜けていたから、それは大人となった今でも相変わらず健在で。

赤い紅茶がテーブルを汚していく。

拒むように綱吉は布巾でべちゃべちゃと紅茶を拭っていくが、赤い染みは拡がるばかりで。




違和感。何かが、お、か、し、い、、。


「つなよし」
「雲雀さん、雲雀さんは汚れませんでしたか?」
「僕は、別に。其よりも君が、」




─── 雲雀さん、



貴方が汚れなくてよかった ───


血に、濡れて。沢田綱吉は、

   死、、、。


「逝。く、な・・・・沢田ッ!!」
「うぁ、はいっ!!」


視界はガタガタと北風が窓を叩く、空調の調った応接室だった。
ソファーに寝ていたようで端に綱吉が映る。


(沢田、生きてる。)

「雲雀さん?酷い寝汗ですよ、何か嫌な夢でも見たんですか?」

(夢…? 夢にしてはあまりにも現実味が有りすぎた、)
「ああ、どうやら少しばかり深く寝入ってしまったようだ」


起き上がるとズキリと頭が痛んだ。内側から強い圧迫感を感じる。


「良かった、応接室に入れば雲雀さんは魘されながら寝てて、凄くびっくりしたんですから!」
「…うん、」


なんだ…?目が覚めたこっちの方が、夢のようで酷く、不安定に感じる。

ぎしりと片方に体重をかけ起き上がる。空は綺麗な茜色をしていた。


(もう、放課後…? 僕は今日、一体何をしていた?)


思い出せない。胸騒ぎに警報が頭を支配する。


「雲雀さん、紅茶でも飲みますか?俺、煎れてきます!」
「あ、ああ。よろしく」


紅茶。こうちゃ…?


「ッ! 綱吉っ」


彼は紅茶の煎れ方を知らなかったはず!



がしゃん。


「つなよし、」
「ああ、すみません雲雀さん…俺、」


赤い染みが足下を汚していく。


「雲雀さん、雲雀さんは汚れませんでしたか?」


べちゃべちゃと染まった床を白い布巾で赤い紅茶を拭く綱吉に、僕は何も答えられずにいて。





酷く目眩を覚える空間は、赤く歪んで見えた。




2010/01/20(Wed) 07:49 

◆ミモザの花束を君に 

結局、アノ二人は仲が良い!


「〜でよー、そん時に相手のピッチャーが」
「うるせー野球バカ! そんな話はどうだっていいんだよッ」
「おはよう山本、獄寺くん」
「はよーツナ!」
「おはようございます十代目!」


いつもの十字路で俺達は合流して三人一緒に登校する。山本と獄寺くんは俺よりも先に合流してて、毎日、今日みたく俺が来るまで待っていてくれる。
獄寺くんがよく一方的に山本へ突っ掛かるけど、俺から見ると獄寺くんなりのスキンシップだって思う。山本もそう捉えているのか、嫌な顔せずにむしろ楽しそうに話してて、山本がズレたことを言えば空かさずに獄寺くんが突っ込みを入れている。


「本当に二人は仲が良いよね」


そう思わずには居られない。山本は暢気に笑いながら肯定して、獄寺くんは全力で否定してまた山本に突っ掛かってたけど。

それに以外と言うかもう一組、案外仲が良い二人がいる。それは…


「これはこれは、お久し振りですねえ綱吉くんにアヒルくん」
「あ、骸」
「並盛に入ってくるな害虫。並盛が汚れる」「だって暇なんですもん」
「死ね消えろ立ち去れ、今すぐに」
「暇ってお前…クロームの身体……」


何故か応接室にて雑用を押し付けられつつ(遅刻の罰)書類整理をしていれば、窓から土足で骸が入ってきた。
途端に雲雀さんの機嫌は急降下。口から呪詛が紡がれているように見える。

お互いに憎まれ口を叩きつつ、武器で応戦し合わないのを見る限り、会話の押収を聞いている限り。


「何だかんだ言って二人共、仲が良いですよねぇ」
「「どこが(ですか)!」」


…うん、似た者同士でってね。

そう思うとランボとイーピン然り、腹心同盟で草壁さんとロマーリオさんも仲が良い。あの二人も何だかんだ言ってはクロームを心配しているし。


「へへっ」
「何がおかしいの沢田」
「綱吉くん?遂に本当のお馬鹿さんになってしまいましたか…」
「失敬な!」


嬉しいんだ、何でかはわからないけれど、とても心が満たされる。


「十代目ぇえ!この獄寺隼人が迎えに上がりましたあ!!」
「ツナ〜帰ろーゼ」
「ワオ、なにこの小動物の群れ。咬み殺そうか」
「おやおや、ずいぶんと久しい顔触れで」
「ああもう!! 獄寺くんダイナマイトはダメッ」





今まで無かったこんな騒々しい日常がすごく幸せなんだと、胸を張って言えるんだ。


2010/01/19(Tue) 20:24 

◆きらりと星の光る夜だから 


─────── あれがデネブでそっちがアルタイル、だからこれがベガ。




暑すぎる夜、ツーリングして海へと家から抜け出した。砂浜にたち、彼は指で満点の星空から星座をたどって夏の大三角形を教えてくれた。


高校生最後の夏の夜だった。

いつだったか、彼がツーリングしてみたいと言ってくれた日、俺は家庭教師に二輪車免許を取りたいと申し出た(ニヒルな笑顔で家庭教師はナナハンの免許から取らせた)。
別に気まぐれからだった。只何と無く、彼とは友人と呼べるほど近いわけでも、唯の先輩後輩仲でも無かった。
゙他人"より遥かに近ぐ友人"には程遠い曖昧な関係。


─── さわだ、僕は此処から出ようと思う。

─── そうなんですか? なんか雲雀さんが並盛から出るなんて考えられないですね。あ、別にバカにしてる訳じゃないですよ?

─── ふん。さわだ、君だって何れは外へと出ていくのだろう?やがてきっと此処には君との深い関わりを持つものはいなくなる。
置いて行くことは許されない。其れが君に与えられた責務だ。

─── ははっ、俺が付いて来ないでって頼んだって皆は来るんだ。来て、くれるんです。


それからは二人してただ大海原を眺めていた。波音は絶えず一定のリズムで寄せては返し、時折生物の腐って死んだ臭いが鼻腔を掠めて、海は生きるものが住んで還る場所なのだと、唯の水ではないことを教えてくれた。

徐々に空が白み始めた頃、再びツーリングして帰った。道中に一度だけ雲雀さんが何かを言った気がしたけど、風音とヘルメットのせいで聞き取ることができず、又雲雀ももう一度言ってはくれなかった。




数ヶ月後、雲雀さんに呼び出された。卒業式の前日だった。徒歩で波止場に来いと言われたので電車を乗り継いで向かったらバイクを傍らに雲雀さんは既にいて、後方には大きな船が船舶していた。

キン、と高い金属音。雲雀が何かを投げて寄越した。キーケースだ。


「餞別。何処へでも好きなところへ行けば良い」


間もなくして彼は乗船し船は出航した。宛は聞かなかったし言われなかった。


「雲雀さん、貴方もお元気で…」


投げ渡されたキーを射し込む。重低音を轟かせる彼が中学より愛用していたバイクに跨がる。
アクセルと共に地を蹴る。


─── 共に強くなった頃再び会おう。その時は…


心地よい声が聞こえた気がした。


2010/01/18(Mon) 19:42 

◆ペリドットの葛藤 

もう、終わりにしませんか。

終止符を打ったのは大切な子供だった。将来、確実に降りかかるであろう批難・顰蹙・批判・地位・権力・掟・力を考えれば、優し過ぎたこの子供はきっと心に拠り所があるせいで潰れてしまう。
いずれこの子はボスになる。
(ボス、部下。そんな壁を僕は気にしない)

避けることは赦されなかった。
(神にすがらなくていい。僕が許すから)

逃げる道は無かった。
(君が望むならば僕が道になろう)

棄てなければならなかった。
(心はいつでも欲してる。それは今もこれからも)


僕は無言で了承した。彼は泣かなかった。(お願い離れていかないで、独りにしないで)

それは日輪の眩しい夏の一日だった。






幾ばくの年月が過ぎ、幾度も季節が巡り、僕の大切だった子供は夫になり父親になった。相手は中学から共にいた元緑中の女性だった。
式の主役席には新郎新婦、小さな赤ん坊がいた。赤ん坊はとても良く両親を受け継いでいた。

騒がしくも誰もが祝福するなか僕は一人、式場を後にし車に乗り込む。ガラン、ガランと祝福のベルが辺りに響き渡った。
彼はボスに父親になった、僕は彼の部下と自組織のボスになった。

腹心の運転する車内で少し眠るために目を瞑る。
目蓋に映る大切なものを手に入れ幸せそうな彼に僕は一人微笑んだ。
(幸せ、なんだね。君が幸せならば僕もシアワセだ)

それは優しい風の吹く春の一日だった。


それがたった数ヵ月前までのことだった。僕は今黒い棺の前にいる。

棺に刻まれだ]"の字に指先で触れる。若くして彼は逝ってしまった。
彼の悲報に彼に関わりを持つすべての者が、悔やみ涙し膝を折り地に着いた。葬式に僕は参列しなかった。

棺の蓋に手に持っていた花束を置く。花びらの白と茎と葉の緑しかない味気無い花束だけど、風に揺られ空に舞うソレ等はもう会えない君のことを呼び起こして、僕はただ見上げて何もせずに見送っていた。



携帯電話が振動する。相手は中学から彼の右腕は俺だと常々豪語していた不良であり、本当に右腕と嵐の守護者。
少し言葉を交わし携帯電話をしまう。


「次に会うとき、君は平凡な家庭で生まれ育った女性で…でも君は君のままで、僕は僕のままで出逢いたいな」


こんなにも優しい君が似合わない世界でなく、ごく普通の平和な世界で。

サヨウナラ。いつかまた出逢うその日まで。


2010/01/16(Sat) 17:49 

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