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□バスケットをしよう
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※この話はBLEACH.328扉絵に端を発したネタ物です。



その日待ち合わせに現れた一護はあからさまに不機嫌な表情で、短い挨拶を交わした後は目も合わせないで一人ヘッドフォンの音楽に聞き入ってしまう有様だった。





バスケットをしよう






秋晴れの休日。
本来来週に迫った定期試験に向けて勉強に励むべき学生の立場にある茶渡が、思いも寄らない理由で招集を受けたのは、つい二日前の話だ。

『明後日、現世代行組と死神副隊長組でバスケ勝負すっから』

――と、やけに気合いの入った仏頂面で宣言した一護に気圧され、わけがわからないながらも頷いて、今日に至る。
どんな成り行きでそんな話になったのか未だに茶渡は知らないままだが、尋ねると一護が酷く決まり悪そうな顔で言葉を濁すので追及は諦めた。
何だかわからないが、普段なら真っ先に「めんどくせぇな」とか言いそうな一護が、妙に本気の目をしてやる気をみせているのだ。それを無下にするような事はしたくない。そう思った。

――が、それは自分に限った話であって、一護の言う“現世代行組”のもう一人はそうは思わないのではなかろうか?
茶渡の懸念は的中し、やはり石田雨竜は素直に頷いたりはしなかった。
 
「何で僕がそんな事に参加しなくちゃいけないんだよ、馬鹿馬鹿しい」

殊更冷めた目で一護の話を一蹴した雨竜に、しかし一護はいつになく食い下がり、半日後にはついに彼に参加を了承させてきた。
あの雨竜を一体どうやって口説き落としたのかは謎だが、ともかく一護は満足そうだった。例え何がしかの代償が支払われたのだとしても一護がそれで良いのならば問題はないだろう、と納得して、茶渡は親友が望んだゲームの決行を無事に迎えられそうな風向きに安堵したのだったが――。


「‥‥‥一護」
「あぁ?」
「‥‥‥‥いや‥‥」
 
よもや、言い出しっぺの本人が当日になってこうも態度を変えようとは、思わなかった。

昨日学校で別れた時は、確かに機嫌良く明るい表情をしていた筈なのに。
明くる今日、眇目気味に眉根を寄せてやって来た一護は、茶渡を誘った時に見せていたやる気もすっかりなりをひそめた様子で渋い顔のまま佇んでいる。

一体何があったのか。
茶渡はむっつりと黙り込む横顔を戸惑いを胸に眺めて、ふと、もう一人の待ち人の訪れが遅い事に気がついた。
 
頭上の時計塔を見上げれば、約束の時間からすでに五分が過ぎている。

「石田が遅刻なんて、珍しいな」

呟いた茶渡に、一護の顰められた眉がぴくりと上がった。

「‥‥?なにか聞いてるか、一護」
「‥‥‥」
「一護?」
「知らねーよ。来ないんじゃねえの?」
「来ない‥‥?」

投げやりな口調で返されて、茶渡は漸く一護の不貞腐れたような態度の原因に思い至る。

「‥‥またケンカしたのか、お前達‥‥」

確信を持って尋ねれば、案の定で一護はグッと詰まって目を逸らした。図星だ。

「何があった?」
「‥‥‥」
 
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