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□青空トリップ
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真っ青に晴れた雲ひとつない空の下、体育教師の鳴らす笛が、校庭に散っていた生徒達を招集するためグラウンドに響く。
「よーし、二人一組でストレッチから始めろー」
気怠そうな調子の指示に各人が身近なクラスメイトと組を作る中、気がつけば雨竜の程近くに居たのは一護だけで。
「組もうぜ石田」
怠そうに首を回しながらも当然のようにそう声を掛けてくる彼に、雨竜は条件反射で顔を顰め溜息を吐いた。
「‥‥どうして君がいるかな‥‥」
「いや同じクラスだからだろ」
それはそうだが何もこんな時に近くにいなくても、と雨竜は思う。他にいくらでもいるだろうに。
しかし見回せば啓吾も水色も茶渡もすでに各々が別のクラスメイトと組んでストレッチに入っており、最早余っているのは雨竜と一護だけだった。
「ほれ、さっさとしろ。お前先な」
「わ、わかったよ、乱暴にするな!」
有無を言わせない手つきで肩を掴む一護を苦情を込めて睨んでから、雨竜は不承不承地べたに座って態勢をつくる。
――本当は、今日は彼とはどんな接触も避けたかった筈なのに。
一昨日から昨日にかけて一護と過ごした時間を思い返して、雨竜は背後の彼に気付かれないよう密やかに嘆息した。
彼と人には言えない関係を持つようになって、三ヶ月足らず。にも関わらず、雨竜が一護と肌を重ねた回数はすでに両手の指では数え足りないほどに及ぶ。
実際にそうなるまでは、彼はそういった事に淡泊なんだろうと、雨竜は勝手に思い込んでいた。むしろ奥手なくらいじゃないか、と普段の一護から想定していたのだが、蓋を開ければ彼も思春期の高校生と何ら変わりはなかったのだと、雨竜は付き合って程無く身をもって知った。
嫌ではない。嫌ではないけれど、慣れない。
睦み合った翌日などはどうしても意識せずにはいられず挙動不審になる自分を自覚しているから、なるべく距離を置こうとしているのに。一護はそんな雨竜の心中を知ってか知らずか、平然と声を掛けてくるし、触れてもくる。
それを苛立たしく思うのは雨竜の身勝手といえばその通りなのだが――。
(少しは気付け、この鈍感男!)
体育着の背中を押す大きな手のひらが、昨日は素肌に直接触れて、この身体の至る所を撫ぜていたのだと――。
つい、その感触と共に、脳裏を過ぎってしまうのだ。