◆gift◆

□Andante Lovestory
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真剣な面持ちの一護に、雨竜は視線を逸らして、ごめんと一言呟いた。
それは以前からは考えられない素直さだと、一護は思う。
やはり一護の告白が雨竜の何かを変えたのは間違いなく、少なからず好かれているというのも、思い込みではない筈だ。
一護は目の前の細い肩を思い切り引き寄せて、腕の中に収めた。

「ちょ、黒さっ‥‥!」
「一緒に居たいから来てんの、わかんねぇ?」

雨竜の肩に顔を埋めてそう言えば、抱き締めた身体がピタリと動きを止める。

「好きだから一緒居てぇんだって、わかんねぇかよ?」
「く‥‥黒崎、」
「‥‥帰れとか言ってんな、バカ」

ギュッと抱き締める腕に力を込めて、一護は顔を上げて雨竜を見る。
今までに無い至近距離で見つめた雨竜の顔は真っ赤に染まっていて、レンズ越しの見開かれた漆黒の瞳に誘われる思いで、そっと首を傾げて薄い唇に口付けようとし――、

‥‥あろう事か、一護の顔面は雨竜の掌に押し退けられた。

「‥‥な、」

さすがにこれは無いだろう、と思う。
だが、しかし――、

「何すんだよてめぇ!!」

‥‥一護の短気も、まずかった。
 
雨竜とて思わず取った自分の行動が一護を傷つけたとショックを受けていたものが、怒鳴りつけられ反射的にムッとした表情になる。

「き、君こそいきなり何するんだよ!」
「いきなりじゃねえだろ、すげぇ自然な流れだったろ今!!?」
「どこがだ!!」
「――つぅか問題はそこじゃねぇ!!!」

不毛な言い合いになりかけたのを、一護が一際大声を発して制した。
ビクリと強張った雨竜の両腕を掴み、一護はその額にゴツンと額を押し当てた。というよりもはっきりと頭突きの勢いだった為に、雨竜から苦情の呻きが上がる。
 
「な、にするんだッ‥‥!」
「うるせぇ痛ェのはこっちも同じだッ‥‥ていうかだから何でだか言え!」

額を突き合わせたまま、一護は言った。
伏せた目線を雨竜の膝辺りに落とし、一拍の間を置いてから、かなり傷ついたと本音を零す。

「‥‥今のはねぇだろ、お前」

例え雨竜の反応が照れる余りの咄嗟の行動だったとしても、一護にしてみればひどく無様に拒絶された事には違いない。

初めて寄せたキス、だったのに。

一護は雨竜の腕を掴んだままそっと顔を放して、傷ついた心を隠さない表情で正面の揺れる瞳を見据えた。
 
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