ひぐらしのなく頃に
□葡萄ジュース。
2ページ/6ページ
「…け、圭一!?」
ようやく動き始めた脳が、私の体を動かした。
側に駆け寄り、肩を揺すりながら必死に名前を呼ぶ。
どんなに呼んでも、圭一は瞼を閉ざしたまま目を覚まさなかった。
口からは零れているのは一筋のジュース。
床に盛大にぶちまけられたジュースでワンピースの裾が濡れるのも構わず、ただただ名前を呼ぶ私の声は、もはや金切り声のようになっていた。
だって分からない。
何が、起きたの?
私がいない数分の隙に何が…?
私の脳裏に浮かぶのは、箜なくて恐ろしい想像ばかり。
分からない!
ねぇ、どうしたの圭一っ!?
「圭一…!」
何も分からずに苛々して、半ばあたるように名前を呼ぶ。
「……う…ん」
すると、以外にも反応があった。
驚いて、穴が空く程圭一の顔を見つめる。
ややあって、ゆっくりと瞼が開いていった。
眩しそうに目を細め、焦点の定まらなかったダークブルーの瞳が、突如私を捕らえた。
「り…かちゃ…?」
「圭一…」
もはや名前を呼ぶことしかできない。
…良かった。
目を覚ましてくれた。
ほっ、と短く浅い安堵のため息をついた時だった。
「ひっく!……っく!あはははははっ!!」
……あら?
……なんだか圭一が壊れたわよ?
ものすごい大爆笑してるわよ?
さっきまでの緊迫した雰囲気はどこへやら、圭一はけらけらと笑い(不覚にもその笑顔に少しときめいてしまった)ゆっくりと起き上がった。
「ちょ……?圭一?」
私の事なんか気にもかけず、ただ笑いまくる圭一。
…ちょっと待って。
なんか圭一、顔赤くない?
っていうかこの匂い……
私は床に転がるコップ、そして圭一が飲んだであろうジュースに目を向けた。
すぐにへなへなと肩の力が抜ける。
……成る程ね。そういうことか…。
これ、ジュースじゃない。
コップの中に入っていたのは、私の取っておきの赤ワインだった。
.