ひぐらしのなく頃に

□葡萄ジュース。
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「…け、圭一!?」




ようやく動き始めた脳が、私の体を動かした。

側に駆け寄り、肩を揺すりながら必死に名前を呼ぶ。
どんなに呼んでも、圭一は瞼を閉ざしたまま目を覚まさなかった。


口からは零れているのは一筋のジュース。
床に盛大にぶちまけられたジュースでワンピースの裾が濡れるのも構わず、ただただ名前を呼ぶ私の声は、もはや金切り声のようになっていた。



だって分からない。
何が、起きたの?

私がいない数分の隙に何が…?



私の脳裏に浮かぶのは、箜なくて恐ろしい想像ばかり。
分からない!
ねぇ、どうしたの圭一っ!?




「圭一…!」



何も分からずに苛々して、半ばあたるように名前を呼ぶ。



「……う…ん」




すると、以外にも反応があった。
驚いて、穴が空く程圭一の顔を見つめる。



ややあって、ゆっくりと瞼が開いていった。
眩しそうに目を細め、焦点の定まらなかったダークブルーの瞳が、突如私を捕らえた。




「り…かちゃ…?」


「圭一…」




もはや名前を呼ぶことしかできない。


…良かった。
目を覚ましてくれた。

ほっ、と短く浅い安堵のため息をついた時だった。




「ひっく!……っく!あはははははっ!!」




……あら?


……なんだか圭一が壊れたわよ?
ものすごい大爆笑してるわよ?


さっきまでの緊迫した雰囲気はどこへやら、圭一はけらけらと笑い(不覚にもその笑顔に少しときめいてしまった)ゆっくりと起き上がった。




「ちょ……?圭一?」




私の事なんか気にもかけず、ただ笑いまくる圭一。




…ちょっと待って。


なんか圭一、顔赤くない?
っていうかこの匂い……




私は床に転がるコップ、そして圭一が飲んだであろうジュースに目を向けた。


すぐにへなへなと肩の力が抜ける。

……成る程ね。そういうことか…。
これ、ジュースじゃない。


コップの中に入っていたのは、私の取っておきの赤ワインだった。


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