ひぐらしのなく頃に
□葡萄ジュース。
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「っと……梨花ちゃん、荷物持ちはここまででいいか?」
「はい。お疲れ様でしたなのですよ」
「よし!じゃーな梨花ちゃ……」
「あ、圭一。良かったらボクの家に寄っていきませんか…?」
葡萄ジュース。
本日の部活の勝者はこの私、古手梨花。
そして、敗者は圭一という結果だった。
『最下位が1位の家まで荷物持ち』
という罰ゲーム遂行後の私の誘いに、圭一は喜んでのってきた。
勿論、誘った目的はある訳で…
「スイカ?」
「はい。
貰ったんですけど、ボク達じゃ食べ切れなさそうで……勿体ないので、食べるのを手伝って欲しいのです」
それは、私を妄信する村の老人から貰ったものだった。
丸々とした大玉のスイカは、私達2人で食べるのはちょっとキツそうで。
余すくらいなら誰かに食べてもらおうと思い、圭一を家に招き入れたのだった。
「あぁ!そういうことなら喜んで手伝わせてもらうぜ!」
「みぃ!ありがとうございますです。
では切ってくるので、ここで待つとよいのです」
そう言い、圭一を居間に座らせ私は台所に向かった。
冷蔵庫からスイカを取り出し適当な大きさに切る。
しゃくっ、と小気味よい音の後に美味しいそうなスイカの断面が現れた。
みずみずしい赤に、黒い粒のコントラストがよく映える。
…カットスイカにでもして、明日のお弁当にも入れようかしら。魅音達にもおすそ分けしなきゃ可哀相よね……。
「梨花ちゃーん?」
「みぃ?」
沙都子達の分と明日のお弁当の分のスイカにラップをかけていると、圭一が声をかけてきた。
「ジュースとかあるかな?俺、喉かわいちゃって…」
「んーと…そこの冷蔵庫の飲み物、ご自由にどうぞ、なのです」
「お、ありがと。
じゃもらうなー梨花ちゃんの分も注いどくから」
「ありがとうなのですよー」
ラップ付きスイカを冷蔵庫に戻しながら、片手間で返事を返す。
――そういえば、この炎天下の中荷物持ちをさせたんだった。
喉が渇いて当然よね……ちょっと配慮が足りなかったわ…
軽い反省をしつつ、適当な皿に私達の食べる分を盛り付ける。
あとは塩でも持っ…
――ガタン!!
まるで、何か重い物を落としたような音。
突然の大きな物音に思わず肩を竦めたが、二度目はなく、家には再び静寂が訪れた。
…なにかしら?
音は圭一のいる居間の方からしたけど…。
「圭一、どうかしたのですかー?」
…返事がない。
不思議に思い、調味料入れに伸ばしかけた手を引き、私は恐る恐る居間を覗いた。
「圭一…?」
最初に目に入ったのは、床に転がるコップとジュース。
……その次に飛び込んできたの、は。
コップの側で、ぐったりと倒れている圭一の姿だった。
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