小説弐

□甘夜
1ページ/1ページ

「…と…ちか…」
光秀の声が、耳元で聞こえる。
身体に絡みつく腕は
不気味なくらい白い。
「光秀…好きだ」
「はい…」
貪るように、お互いの舌を絡めあう。




「元親…?眠らないのですか?」
「ん?この髪、飽きねーな、と思ってさ」
スルスルと、俺の指から流れ落ちる光秀の髪。
すべてが愛おしいと思う。
「あ、忘れるところだった」
綺麗な扇子があったんだ。
光秀にあげようと思っていたんだ。
「ん。」
「扇子?」
ゆっくりと扇子を広げていく。
「…綺麗ですね」
夜桜をイメージしたらしい絵。
「季節、全く関係ないけどな」
夜桜は光秀と似ている気がするから、なんとなく手にとってしまった。
「気に入った?」
「はい。ありがとうございます、元親」
扇子をとじて、枕元に置き
俺の唇をふさぐ。



「愛してます、元親」
「あぁ、俺もな」
光秀の頭を引き寄せて、俺からも接吻(くちづけ)る。
光秀と唇を重ねると
長いこと離れられなくなる。
何度も味わっている唇なのに
重ねるごとに、その時間は長くなっていった。
一晩中、重ねていられるんじゃないか?
「はぁ…元親…」
「寝る時間、なくなるぞ」
「このままじゃ、眠れないと思いますよ?」
「それもそうか」
「それとも…このまま、唇だけ戯れますか?」
俺の唇に指を滑らせて、誘うように自分の舌で唇を濡らす。
「我慢できなくなるぜ?」
「それはあなたでしょう?」
「じゃ、勝負といこうぜ」
「受けてたちます」


弧を描く光秀の唇を引き寄せる。
外は雪でも降っているのか
俺と光秀の息遣いしか聞こえない。
「は…もとちか…」
「ん…あいしてる…」
「まだ…たりませんよ?」
光秀をゆっくり押し倒して、体制を入れ替える。
「まいりました…?」
「まだまだ、余裕だぜ?」
「んん…ふ…」
互いの髪を指に絡めて
触れているのは唇だけなのに
抱き合っている時のようにとけていきそうだ。
「光秀…」
「はい…ね…もとちか…?」
「ん?なんだ」
「あいしてください…」
「降参?」
「はい…」
珍しい。
「あの扇子…」
扇子?特に変わったところもなかったよな?
「私のために、手に入れてくれたのでしょう?」
「あぁ当然」
「それだけで…身体が火照っているんです」
「俺の勝ちだな」
「今夜は、負けました」
照れているような、困っているような
そんな可愛い顔見せられちゃ
これ以上、接吻だけなんて絶えられない。


光秀の髪をかまっていた手を
光秀の身体に滑らせる。
「さっきまで、さんざん…」
「元親の…せいです…」
「責任は取るぜ」
光秀の艶やかな表情は綺麗だ。
愛を囁くこの日には、いつもこの表情をみていたい。
「はぁ…元親…好きです…」
「あぁ、俺もな」
どんなものより、誰より深く
「愛してるぜ」







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ