小説

□雨
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しとしと
さぁ…………
 
 
よくふりますね…
雨の日は少し、たいくつですよ。
たいくつは嫌いですよ…
 
「元親のところにでも、遊びにいきましょうか」
きっとあなたもたいくつしているハズ。
私が行ったら驚くかもしれません。
 
 
さぁさぁとふる雨のなか。さえぎるものを何も持たずに、元親のもとへ。
いつだったかあなたは、私の濡れた髪をとてもきにいっていた。
このままあるけば、自然と濡れるでしょう。
 
いつから…こんなふうになったんでしょうね。
 
いえ…考えても答えは出ない。
あなたの言葉をかりるなら、気のむくまま…でしょう。
 
 
大きな扉をあけ、中にはいると、私を見つけた人達が騒ぎだす。
今日はぶっそうなものはもってないのですが。
 
「光秀!」
 
あわてたあなたの声、作戦は成功、でしょうか。
 
「な…ずぶ濡れじゃねーか。おい、何かふくもんもってこい」
「ヘイ!」
「何考えてんだ。こんなに濡れて」
「いつかあなたが…濡れた髪をきにいっていたので…」
「な…バーカ。こんな冷たくなってよ…」
 
そっと私の頬を元親がつつみこむ。
そのあたたかさに、己の体温の低さを知る…
 
「あなたの手はいつも、あたたかいですね…」
「お前がつめたいんだろ?」
「そうですか?」
「寒くなかったのか?雨ん中あるいててよ」
 
そういわれてみると…寒いとは感じませんでしたね。
 
「あぁ…」
「ん?なんだ?」
「あなたのことばかり考えて、あるいていたから、でしょうか」
「お…まえは…」
 
 
かわいた布団に体をあずけると、あなたしかみえなくなる。
「どうしでした…?私の奇襲は…」
「本当に驚いたぜ」
「雨の日ですから…たいくつでしたでしょう?」
「まーな。…雨の日はいつもこいよ」
「それでは奇襲にならないでしょう?」
「じゃーよ。今度は俺が光秀を驚かしてやるよ」
「それは、楽しみですね」
 
 
 
あなたのうでにだかれて、濡れた髪をなでられて…
少しずつあなたの体温が私のなかにしみこんでくる。
 
こんなに深くあなたのあたたかさを感じられるなら
雨に濡れるのも悪くないですね…
 
 
 
 
 
 
 


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