小説

□奇
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音もなく
気配もなく
そんな人間が、この世にいるのか…?
 
 
「元就」
「!?」
ふりかえるとそこに、明智光秀が妙な笑顔で立っていた。
「何の…用だ」
「元親が、魚を沢山釣ったので、おすそわけですよ」
「ならさっさと置いて帰れ」
「おや、つれないですね…」
 
 
明智光秀。
妙な男だ。
目をそらすと、その存在がわからなくなる。
“そこにいる”という気配がない。本当に死神なんじゃないか…?
 
 
「慶次とは、仲良くやっているそうじゃないですか」
「な!あんな人間と仲良くなった覚えはない」
「クク…あなたらしい」
光秀はゆっくりとその場に座った。音もなく…

「…貴様、本当に生きているのか?」
「こうして足もあるじゃないですか」
ポンポンとひざをたたく。そのしぐさはなんとなく…
「フン。長曾我部はなぜ貴様といるか不思議だ」
「でしたら、あなたは何故、慶次といるんですか?」
「だから我は…!べつに……」
「おや、顔色が変わりましたよ?」
「煩い。とっとと帰れ」
「いえ、元親がこっちにくるんですよ」
「は…?」
ここは我の城。
「元親が慶次をつれてくると言ってましたよ?私がひと足早くきたんです」
「帰れ。我は暇ではない」
「先程から私と話をしているじゃないですか」
「っ…」
この男は…!
「今、魚も調理してもらってますし、4人で食べましょう」
「我の部下に頼んだのか?」
「はい。快くとりかかってくれましたよ」
この男を前にして、断れるハズもない…
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