小説

□笑
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にっこりと…
なんて期待はしないけど、やっぱり笑う顔がみてみたい。

誰の?って?
モチロン…

「もっとなっりくーん」
「…」
今日も返事がない。
「あなたの大好きな、前田慶次くんが遊びに来ましたよー。」
「誰が貴様など好くか!」「お、見つけた。」
「…はぁ…」
つい声をだしてしまったって顔。
「なにやってんの?」
「貴様には関係ない。」
また難しそうな顔して作業にもどる。なんでこう、表情が変わんないんだかねぇ。
(あ、そーだ。)
「元就、紙と筆かして。」「嫌だ。」
「いーじゃんか。貸してくれなきゃ…」
そぉっと元就の背後に近付き、ちゅっとうなじにキスをする。
「!?馬鹿者!」
「な?貸してくれよ。」
「……わかった。」
そばにあった紙と筆を俺にむける。
「っしゃ!」
畳に寝転がって作業作業。絶対笑うぜ?これみたら。
「よし。元就、みろよ。」「何だ、邪魔をする…な…って…?」
「よく描けてるだろ?」
「我…か?」
「モチロン。ど?うれしい?」
「うれしくなど…!…でも…」
困ったような、恥ずかしいような顔。
「…よく似ている…」
ほんの少し瞳が細まって、唇が弧を描いてる。
元就の笑った顔。
「やりぃ!」
「!」
腕を引き寄せて抱き締めれば、放せってもがくけど、怒った顔はしていない。
「俺、元就の笑った顔、好きだぜ?」
「な…ん」
次の言葉をだせないように塞いでしまえば俺の勝ち。
「っこの…」
「好きだろ?」
「フン…」
耳を赤くしてまで強がらなくていいのに。
「もっと笑えよ元就。」
「貴様のように何もないのに笑えるはずもなかろう。」
んじゃ、もっと笑えるようにいろんなこと仕掛けてやろ。
「毎日笑わせにくるな。」「こなくていい。」
でも、そう言ってる横顔は、どこかうれしそうに笑って見える。
やっぱり笑った顔が一番だ。







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