小説弐

□朝桜
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「光秀、みてみろよ」
「はい…?あぁ…桜…」
俺と光秀のみる先に、朝日を浴びた桜がある。
「綺麗ですね…」
「てかよ…戸、開けたままだったか?」
「桜にみられましたね」
クク…っと笑う光秀も
朝日に照らされて、髪がきらきらと綺麗だ。
「元親、今日は外に桜を見に行きましょうか」
「いいぜ。元就のところ、わりと豪華に咲くらしいぜ?」
「それはいってみましょう」
「魚でももっていくか」
慶次もいるだろうしな。


光秀…ま、外にいくと天海、だけどよ
ゆっくりと二人で歩くのは好きだ。
季節がいつでも、同じ道でも。


「元親」
「ん?」
「桜に見とれているんですか?」
「まーな…綺麗だし」
今の時期しかみれないしな。
「貴方の視界を奪うなんて、妬けますね」
光秀が俺を見下ろす。
髪が顔にかかってスルリとおちる。
「桜がみてるんだぜ?」
前にもこんなことあったよな。
「みせつければいいい…そうでしょう?」
唇が重ねられる。
ゆっくりと髪を梳くと
ゆっくり舌が絡まる。

「ん…ふ…」
「光秀…」
「ん…とちか…」
あ…たまには言ってみるか。
「ん…天海」
「!」
すごく驚いた顔で見下ろされた。
「嫌いじゃなかったんですか…?“天海”は」
「誰が言ったよ、そんなこと」
“光秀”って呼んで、返事されなかったことに拗ねてはいたけどよ…
「どっちも“俺の恋人”だろ」
「元親…」
嬉しそうに眼が細められる。
「まだ…昼の桜まで、時間がありますよね?」
「まーな…“天海”を愛せってか?」
「さすが元親」
誘うように降りてくる唇。
拒む理由なんて
ないよな。






了。

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