小説
□序章
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陽光は生きる力を万物に注ぎ、
月光は夢見る力を万象に与え、
星光は導きの力で万難を解す。
陽光を司る者は事柄を明らかに、
月光を司る者はその理非を裁き、
星光を司る者は賞罰を与奪する。
§
少年が彼らに出会ったのは、ひらひら遊ぶ花弁を乗せた、甘い風の吹く春夜。
シュルエナという名の大陸がある。世界地図の中心からやや左上に位置する東西に長い大陸で、三つの国から成り立つ。
国土は、大陸をほぼ等しく縦に三分割。言語も同じで、地方によって多少の違いはあるものの、大陸内ならば通じないことはない。
国の名は西から、コトランゼ、ルオーニ、サイニャ。
少年が、笑顔が挑戦的な二人に出会ったのは、ルオーニでのこと。
月下の庭園での邂逅は、偶然のものだった。
「私たちと、一緒に行かない?」、と。
少年に唐突に差し出されたものは、白い手と簡素な言葉と金色の光。
一緒に……? と呟いて、手と、それを差し出している顔を交互に見て、そして一度だけ首を横に振る。
少年は、その手を取らなかった。
光に照らされることをしなかった。
「……必要ない」
ぽつりと言い、何か言いかけた相手をまっすぐに向けた視線で抑え、続ける。
「待ってろ」
自分の足で追いついてみせる、と。
そう言った彼に少し驚いた顔を見せ、そして二人は浅く笑った。
少し離れて立っていた一人は「上等だ」と背を向け、手を差し伸べていた一人は「期待してる」と言って仲間に倣った。
三年前の、出来事である。