完結記念部屋

□マイハート!
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きらり、と右手の薬指に光る指輪。

“彼氏”がいる訳ではなくて、ただ“気に入ってる”から。
だから左手じゃなくて右手に。
例え左手にする為に贈られたものだとしても…―





「なー、摩季ぃ。いい加減ソレ外さね?」

「どれ?」

「コレ」


後ろから抱きしめられる体勢で雑誌を読んでいた摩季は振り返った。
男の指はするっと摩季の腕を辿り、右手の薬指に光る指輪を指ごと掴む。


「いくら気に入ってるからって付き合い出してからもずっと付けられたら気になる」

「もー、またその話?いいじゃん。」


男の腕を振りほどいてまた雑誌に目を落とした。


「なー、新しいの買ってやるからさ」

「新しいのねぇ〜…」

「な?」


期待が篭った視線を感じながらぺらぺらと雑誌をめくってゆく。

うん、これでいいか。


「コレ。これ買ってくれたら付ける」

「…ぐっ!?」


雑誌を指さして甘える様にわざと上目使い。


一般の大学生では到底すぐには買えない値段がそこには書いてある。


「ブ、ブランド品は反則だろー?」

「えー、じゃあいい。」


右手のコレは外さない。それで話は終わり。
そんな態度の摩季に男は深くうなだれた。



別に前に付き合ってた男からの物だとしても。
気に入ってたから未だに付けているだけ。
たまたまそれが左手の薬指にする為に贈られた物で、“彼氏”じゃなくなったから右手に移動しただけ。

左手の薬指にはちゃんと今の“彼氏”からの指輪があって。





(…それでいーじゃん)






end.







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