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□スキがひとつ。
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お昼休みに友達と食堂に行ったら珍しく一人の彼を見かけた。
「ごめん、私あっちで食べるね」
指を向けた方を見て、友達は笑いながら快く手を振ってくれたのでトレイを持って彼の方へ足を向ける。
コトン、と音を立ててトレイを置いて彼の目の前に座った。
「調子はどう?キッド。」
「…まあまあ、ってとこかな」
私に気付いた彼は独特の表情で笑う。
「今日も病院?」
「や、今日から部活に出るよ」
「そっか、皆安心するわ」
ちらっと包帯でぐるぐる巻きにされた方の腕を見る。
利腕と反対の手で器用にフォークでランチを食べる彼に感心しながら、ランチに付いていたパックの牛乳を封を開けて彼のトレイに乗せた。
「相内」
困った様な笑いを含む声ににこっ、と笑ってみせた。
「や、ほら、カルシウム採っておいた方が骨にはいいんだよ?だから代わりにお茶飲んであげようかなぁ…って」
「……好き嫌いはよくないと思うなぁ」
「あ、ばれた?」
「まぁいいけどね」
そう言って自分のトレイに置いてあったお茶のパックを私のトレイに置いてくれた。
「そう言えば鉄馬君は?」
「あー…職員室に来る様に呼ばれてたからねぇ先に食べたみたいだよ」
「また補習の話かしら」
「多分ね」
鉄馬君ならあり得るわ。
なんて話をしながら食事を進めた。
思ったより元気そうで内心ほっとした。
「それじゃあ、私も今日は1日アメフト部に居ようかな」
「今週はサッカー部?だっけ。練習試合があるんじゃないの?」
「んー、そうだけど別に私が居なくったって出来るフォーメーションいっぱいあるし」
「キャプテンの相内がそんなのでいいの?」
「いいの。チア部の子達も今日位許してくれるわ」
チア部の部員達は私が掛け持ちしている事が原因もあり、他の部よりも交流がよくあるアメフト部に甘い所がある。
それに実はこうやって二人で話すなんて久しぶりで
いつもなら部活中なんてゆっくりなんて話せない。
(こんな機会逃すなんてもったいない)
今日はベンチに二人並んで座って、いろんな話をしよう。
放課後の部活を想像し、
にこにこと笑う私を見て彼は「しょうがないなぁ」と私の好きな彼独特の表情で笑った。
.end.