宝物部屋

□藍子様より☆
1ページ/2ページ

透 明 花 恋



ドンッ

軽い衝撃音と共に視界が塞がれた。


「いてぇ。」
「あ、ゴメン。」
「ノート読みながら歩くなよ。」
「本読みながら歩いてるヤツに言われたくない。」
「可愛くねー。」
「お互い様でしょ。」


部活帰り。
最後尾を歩いていた摩季が、漸くアメフト部と書かれた冊子から目を離す。
ずっと読みながらだったので前を向くと皆の輪から随分と距離が出来ていた。
・・・なのに、どうして筧だけが傍に居たのか その理由には気付かなかったが。


「あ。」
「どうした?」
「朝の練習メニュー変えたよね?教えて。」
「まだ書いてなかったのか。」
「もう!そっちが大幅に変更するから一気に覚えられないの。」


頬を膨らませながら自分を睨んでくるマネージャー。
・・・不覚にも一瞬、可愛いなどと思ってしまった。
少し大きめな咳払いで邪念を追い出し、説明を開始する。


「うわ・・・こんなに変えてた?」
「持久力のウエイトを増やした。」
「最初っからこんなに飛ばして大丈夫?」
「まぁ、お前には無理だな。」


「当たり前で・・・って、人の頭に肘乗せないでよ!」
「ちょうど良い位置。」


「喧嘩売ってんの!」
「褒めてんだろ。」
「何処がっ。」
「俺の高さに最適だって。」
「どうせ私は小さいわよ。」
「普通じゃねーか。」
「アンタに比べじゃ誰でも小さいのっ。」
「それと、週末の練習内容も変更してるぞ。」
「・・・は?」
「ほら、これを後ろに持ってきて、」
「えっ・・・・ちょっと待ってっ。」


筧が指差す部分を摩季も一緒に目で追い。
未だ腕を有るけど不思議と気にならず真剣に話を聞く。
そんな彼女の姿に、彼は無意識に小さく口角を上げた。


「で、最後のダッシュ走を倍にする。」
「倍っ?」
「ああ。」
「練習量、増えすぎじゃない?」
「目標はクリスマスボウルだからな。」


「おーい!筧、摩季ちゃん!」
曲がり角の所で小判鮫が手を振る。
が、筧達を見た途端 何故かピシっと固まった。


「小判鮫先輩だ。」
「あ、遅れてスミマセン。」
「いや!その、えっと、皆でラーメン食ってるけど・・・来る?」
「お前どうする?」
「冷やし中華が食べたい。」
「はい、すぐに行きます。」
「ゆ、ゆっくりでいいからっ!」


そう一言だけ言って、そそくさと小判鮫は店に戻った。
彼の妙な言葉に、残された二人は思わずキョトンとする。


「ね、なんでゆっくりなの?」
「俺に聞くなよ。」
「変な先輩。・・・・・あ!」
「今度はなんだ?」
「先週の試合だけどさ、」




摩季の質問に筧が答える。

そんなやり取りは、もう少しだけ道端で続いた。


→お礼
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ