宝物部屋
□藍子様より☆
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好きな人の望みを叶えてやりたいとは思う。
思うが、なまじ喧嘩友達だった期間が長すぎるせいだろう、か。
想っていることを伝えたり、それどころか名前で呼ぶことさえも・・・
照れてしまって素直になれず、いつもの調子で未だに誤魔化してしまう。
「情けねぇ。」
たった、これしきの事だ。
大切だというのは偽り無い本心なのに。
どうして直接的な言葉になると・・・こんなに苦手なのだろう。
気持ちが大きければ大きいほど、それに比例して更に言い出し難いから厄介だ。
そっと、彼女の綺麗な髪を優しく梳くと。
ああ・・また、愛しさが募るのが分かる。
「摩季。」
静かに手を重ねて、唇で触れる。
ゆっくり伝わる体温が心地良い。
「好き、・・・だ。」
暫しの沈黙の後。
これが彼の限界だったのか、妙な呻き声と共に全身の力を抜いて項垂れ落ちる。
勇気を振り絞って(しかも寝てる人間を相手に)このざまとは。
面と向かって言うとなると・・・想像しただけで先が思いやられた。
「・・・・・前途多難すぎる。」
もう一度深い溜息を吐き、摩季の身体を抱き寄せて自身も眠りに入る。
本人は気付いていないが・・・実は無意識における行動では愛情を表現してくれる。
だから彼の想いは彼女にもちゃんと伝わっているし、結局のところは満たされていた。
互いに愛されている自覚。
これも一つの、幸せの形。
「私、あの時ホントは起きてたの。」
とても、可笑しそう
そして、嬉しそうに
摩季からそんな恥ずかしい・・・ビックリ告白をサプライズされるのは、筧の数ヵ月後の誕生日。
→お礼