幻蝶の織り機

□◇銀河の夜に
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 私も、それ以上はもう話しかける事が出来ず。ただ無言で、互いに煙を吐き続けた。


 こうして、二人きりでまともに会話したのは…後にも先にも、これが最初で最後。
 次に訪れた二人だけの時間は短く、会話も、ほぼ無きに等しかった。


 煙が無くとも吐く息が白くなり始めた冬。嫌な空気を肌でピリピリと感じる早朝。
 まだ日の出前の薄暗い時間帯に、何故か千さんは外に出てきて空を見上げていた。起きたばかりなのか、いつもの学生服ではなく寝間着のまま。
 流石に薄着で風邪をひいてしまうと、中へ入るように促そうと足を動かした。だが、千さんは先に私の元へと歩いてきて

『これ、あげる』

無理やり何かを握らせてきた。

『鍵さん、覚えててね…』

 千さんはフワリと笑って言うと、家の中に戻って行った。
 手を開いて見れば、そこにあるのは以前吸っていた煙草の箱と銀色に輝く火打ちの道具。

 私は、何も言えなかった。
 これを何故渡すのか、何を覚えていて欲しいのか…理解出来ず、問えないままにその日…




 千さんはこの世から消えた。

 呪言花札の封印の、礎となって…。





 
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