貴女に捧げる夜

□第七章・旅立ち
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3月。



地元の街はまだちらほら雪が残っている場所が目立つ。



無事卒業を迎えた僕。
志望大学にも合格し、この春から上京が決まっていた。



『リョータ!』



後ろから声をかけてきたのは



『アスカ』



相変わらずの短いスカートに、
心なしかふっくら肉付きのいい前の彼女だった。



『リョータ、彼女出来たんだね。前にバイト先の居酒屋さんの近くで腕組んで歩いてるの見ちゃった』



彼女が笑う。



悪戯っぽい笑顔は全然変わっていなくて
懐かしさと愛しさが込み上げる。



『アスカはどうなの?』
『優しい彼がいるよ。5つ年上の社会人』



丸くなった輪郭を見て何となく、幸せなんだな。と感じた。



ふいに進路のことを聞かれ、関東に行くことを伝えると、

“みんな行っちゃうんだね。
遠いよ…”

と少し寂しそうな顔をする。



学年の過半数がこの街を出て行くので、
てっきり彼女も同じだと思っていたのだけど…



『アスカはどうするの?』
『ママ』



僕の質問に笑顔で返す。



ママ?ママって…



『どこかの店の?』
『違うよ。お母さん!』



唇を尖らせて僕を睨む。



『…結婚するの!?』



驚いた様子の僕を見て笑いながら



『いるんだもん』



と、お腹を軽く叩いた。
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