Dreaming!

□きみのなまえ
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「華子」とか「花子」とかみたいに、私の名前の最後には「子」がつく。

自分の名前が嫌って訳じゃない。


けど、「さくら」とか「もも」とか「あかね」とか。
女の子らしくてふんわりした雰囲気の名前が羨ましくて仕方なかった。

ぶっちゃけると、今でも憧れてる。


こんな話でも笑い話にはなるかな、と国光に話してみた。
でも国光は笑うどころか、いつもより眉間に皺を寄せてしまった。


するといきなり立ち上がってどこかへ行ったかと思ったら、ペンと紙をもって戻ってきた。


「子という漢字は一と了から出来てるな」


左手で持ったペンで、綺麗な文字が真っ白の紙に書かれていく。

その様子を見ながら、「うん」とだけ返事をした。


「一は、はじめ。つまり生まれてからだな。
了は完了。終わりを表す」


「つまり子には生まれてから死ぬまで、という意味があるんだ。
生まれてから死ぬまで、幸せで溢れているように。そんな思いが込められているんだぞ」


だからそんな事言うんじゃない。
そう言って国光は私の額を軽く小突いて笑った。


「…うん。」


「名前は親が一番最初に贈るプレゼントだからな。
ありったけの幸せを贈ろう」



国光が優しく私のお腹を撫でた。
張り出したお腹には小さな命が宿ってる。

早く会いたいから出して!と言わんばかりに元気にお腹を蹴ってる。


「きっと国光に似て運動神経がいいんだろうね」


「お前に似て悪戯好きだろ。俺が触ると必ず蹴ってくるからな」


「……ま、元気ならそれでいいよ!」


「うまくまとめたな」



きみにありったけの幸せを贈るよ。


パパはきみがお腹にいるとわかってから、帰ってくる時間が少しだけ遅くなったんだよ。

帰りに本屋さんで育児書や、おもちゃを見るようになったから。

こないだなんてベビーベッド買ってきちゃったんだよ。
せっかちなパパだよね。



パパはきみの事が大好き。

もちろん、私もきみの事が大好き。

まだ会ってもいないけど、絶対に嫌いになんてならないから。約束します。


だからお願い。
元気に生まれてきてね。



きみに会えるその日にちゃんと名前で呼びたいから、パパとママはきみの名前についてたくさん悩みたいと思います。

幸せな悩みだから気にしなくていいからね?



生まれてからずっとずっと幸せでありますように。

ありったけの幸せを、きみに。




End
(修正しました)

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