政×主
なりそこないの
"かみさま"
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冬の寒さが衰え、固く閉ざした蕾がようやく目を覚まそうと淡く桃色を覗かせていた時期。
「はぁ〜。」
昼間は暖かかった風も、夜になるとツンと皮膚に凍みる冷たい風に変わる。
吐く息は白く上空へと消えていく。
今は戦の最中で気も抜けない。いつ後ろから攻撃して来るか分からない。
寝てしまった瞬間に殺されるかもしれない。
ピリピリと張り詰めた空気が木々をざわめかす。
「Hey、小十郎…何処まで付いて来る気だ?」
呆れた様な仕草をする。
「今は戦の最中故に、政宗様の行くところ何処までも…。」
「少し一人になりたい。」
「お気になさらず、空気だと思って頂ければ。」
…無理。
けど、小十郎と離れなければアイツに会えない。
嘘を付くことにした。
「用を足すだけだ。」
そう言われると、仕方ない。小十郎は、一礼をし本陣に引き返した。
姿が見えなくなったのを確認し、自分しか知らない道を進む。松明を持ってやっと見える暗さなのに、政宗の足はまるで木々が避けているみたいに的確に目的地に進む。
突然、ある場所に入ると、妙な感覚に包まれる。