お題部屋
□睡眠で10題 3.寝顔
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「起きてた?」
「・・・・悪いかよ」
「全然悪くねーけど。・・・・何で寝たふりしてたんだよ」
「・・・・・・」
赤くなった頬に手を添えれば、強気な態度とは裏腹に甘んじてそれを受け入れた。それどころか猫のようにすりよってくるのだ。堪らない。
杉山が聞いた途端黙り込んだ大野の頬は、これ以上赤くならないと思ったのに更に赤くなり、密着した体からは爆発しそうな心音が聞こえてくる。
「・・・・・・て・・・たろ・・?」
ざっと数十秒は黙り込んだのち、杉山の手の平に擦り寄ったまま、視線だけを向こうに逸らし大野は小さく呟いた。
「え、何?」
「・・・・だって・・・、起きてたら、触ってくれなかったろ・・・?」
ほとんど唇を動かさずにそう言って、おでこまで赤くなった顔を下へ俯かせた。もちろん杉山の手の平はそのままで、だ。
杉山は大野の言葉に目をパチクリ。
だってそれじゃあまるで、
「・・・オレに触って欲しいから、寝たふりしてたってこと?」
「・・・・・・」
自分で言っていて顔が赤くなった。
空いた手を大野と同じように頬に当ててみると、グングンと体温は上昇していて三十八度くらいはあるんじゃないかと思った。
「大野、」
大野の可愛さにクラクラする。
返事がないということは肯定なのだけれども、「そうだよ」との言葉が欲しくて名を呼ぶ。もちろん大野からの返事はない。
今や杉山の心臓も時限爆弾の爆発をカウントダウンしているようにドックドックと脈を打っている。
それに大野も気付いたのだろう。顔を俯かせたままチラリと瞳をこちらにむけ、目があうと慌てて逸らす。アンタ可愛さでオレを殺す気ですか?
杉山の手に自らの手を添えて瞼を閉じ、心音をただ聞いている。母親に抱かれそれに安心する赤子のように。
「・・・・っ、大野っ、」
「んっ、」
堪らず頬に触れている手の親指を口にあてがい含ませると、仔犬のように鳴いて触れられるがままにそれを舐めた。その姿はいつもの大野ではなく、甘えたい、触れて欲しいという気持ちが全面に出ている。
プライドが高い大野のことだから、「触って欲しい」なんて直接的な言葉は相当時間をかけなければ出てこない。寝たふりをしてまでこういうふうにするということは、甘えたいし触って欲しいのだ。
だから杉山は昨日の夜も随分触れ愛し合ったというのに、日光降り注ぐ朝からたっぷりと抱いてやる。
行為後に、「お前は限度を知れ!!」と怒鳴られていたのだが。
END