エンド

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『ある王様の話』





遠い遠い、昔のことです。
ある、王様の話です。

この国を支配したその王様は、何もかもを欲しがる強い欲を持っていました。
力も、富も、何もかも。
王様でしたから、それを手に入れるのはたやすいことでした。
王様は不思議な力を持っていて、それは、国に住む者達にとって絶対的でした。
王様に刃向かうと奪われる。
そう言って、怖れました。
王様は、気に食わないことはすべて消すことができました。
力にすべてを任せて、手に入らないものは奪っていきました。
そうして、王様はすべてを手に入れました。
それでも、王様は満足しきれませんでした。

更なるものが、欲しくなるのです。
ものはすべて手に入れた。
ですが、一つだけ、王様は手に入れることができませんでした。

それは、イノチです。
王様はイノチを欲しがったけれど、それは奪えど奪えど自分のものにはなりません。
怒った王様は、願いを込めて言います。

「私は"時"を犠牲にしよう。そうすれば、イノチは手に入る」

それは、推測でも希望でもなく、確信でした。
あかい光に呑まれたように、王様は、そう呟きました。



そしてその後、王様の姿を見た者はいません。
王様は誰に告げるでもなく、忽然と姿を消してしまったのですから。
王様の側近達は、王様は、欲に呑まれてしまった、と口々に言いました。
だから今も、満足できないから、どこかで奪い続けているのだと。
そのために、"時"を犠牲にしたのだと。


ですから、人々はその王様の事をこう呼ぶのです。






――<時の王ルーチェリア>と。





  to be next...




 
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