昼下がりのドロシー
□第三話
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ぐにゃって感じだった……。
いや、いきなり何って感じだけど、俺、昔は結構変身ヒーローとか憧れてたんだよね。普段は何の変哲も無い無力な一般人、悪くすれば社会的弱者が、変身することで正反対の、皆から認められた強者に変わる。それが好きで。だから、変身シーンにもそれなりに期待していた。なのに、それなのに……。
ぐにゃ、ですよ。チューインガムを練ったみたいにぐにゃっと人型になりましたよ、こいつは。
「ライアン〜……」
「え、何ですか」
ライアンは耳の形が気になるのか、ふにふにと耳朶を引っ張りながら振り返った。
「何でもない」
お前の変身のあまりの味気無さに俺の変身への夢が壊れたんだ、とは言えない。
「行くぞ」
「え、えぇっ?」
俺は戸惑うライアンを置いて、森の中を歩き出す。
「遅い!」
「で、でも……」
怒鳴るとライアンは少し口ごもり、
「そっちは反対側っ……です」
そう言った。
「「…………」」
ごん。
「な、何で殴るんですかぁ!?」
「よし、これで悪は去ったな。行くぞ」
「えぇええっ?」
今度こそ、俺はアリ村に向かって歩き始めた。