黒色の本

□chain
2ページ/5ページ


●同級生の印象●


ああ、はい。俺、あいつの後ろの席でした。



事件のあった日?

いや、普通だったと思いますよ。いつも通り登校して、いつも通り机に書かれた落書きを消して、いつも通り杉野に絡まれて。



……はい、そうです。死んだ杉野のことです。杉野は座っていたあいつの前に立って、飲んでいた缶ジュースの中身をあいつの頭にぶちまけて……その時でした。何か変だなって気づいたのは。いつもならあいつ、じっと座ったまま杉野がいなくなるのを待っているだけだったのに、あの日は違いました。笑っている杉野を一瞥すると、いきなり鞄の中から包丁を取り出して杉野の腹を刺したんです。それだけじゃなくて、何か叫びながら杉野の体中をめった刺しにして……俺なんてまともに血ぃかぶっちゃいましたよ。



……ああ、はい。何でか分からないんだけど、血だるまになった杉野が床に転がるまでみんなあの場で固まってました。驚きすぎちゃったんですね。やったのがあいつだし。杉野の動きが完全に止まると、あいつは包丁を落としてじっと警察が来るまで動きませんでした。



……いえ、抵抗なんて全く。むしろ自分から進んで、やって来た警官に両手首を差し出したくらいで。



普段?

別に普通でしたよ。いい奴だし。逆に杉野の方は最悪でしたね。「殺されて当然」って思ってる奴も多いと思いますよ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ