黒色の本
□生まれる記憶
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暗闇を切り裂いて、一筋の光が差し込んでくる。
開いた視界の中、疲れ果てた顔だが満面に喜びと笑みを湛えた女性が手を差し伸べてくる。
「ほら、見て。目元があなたにそっくり」
優しい手に抱かれた彼の目に、顔をくしゃくしゃにして笑っている男性の姿が映った。男性は筋張った硬い手で彼を抱き上げ、彼の双眸を見つめた。
「隆夫、大きくなれよ」
それが、彼の名であった。
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